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世田谷線の「色」

平成29年度入学 門モシ

 

1. はじめに

 先日、『玉電110周年記念 幸福の招き猫電車』として『白猫色』の電車が(2017年駒場祭時点で)走り始めた東急世田谷線。10編成ある車両は全て違う色となっている。同じ形式同じ路線で違う色の車両を走らせる例は、駒場を走る京王井の頭線などいくつかあるが、全ての編成が違う色をしているというのは全国的にも珍しい。また、世田谷線は車両だけでなく、駅もカラフルである。東京メトロ南北線など地下鉄で多く使われている『ステーションカラー』が導入されているからである。この文章では世田谷線の車両と駅について、そのカラーバリエーションを見ていこうと思う。

 

2. 歴史

 色の歴史を語る上で押さえておきたい路線の歴史をごく簡単にまとめる。世田谷線はその昔「玉電」と呼ばれており、渋谷と二子玉川を結ぶ路面電車の支線として存在していた。1969年に渋谷―二子玉川間が廃止され、三軒茶屋―下高井戸が残った。この時、玉電の顔とも言えるデハ200形が引退した。残った世田谷線には玉電時代の車両が使われていたが、1999年から2001年にかけて現在の車両に置き換えられた。

 

3. 車両

1)過去の車両

 まず現在の車両について見て行く前に、過去の車両について見ていこうと思う。

[1]デハ60形、デハ70形、デハ80

 これらの車両は当初、濃い緑色とクリーム色のツートンカラーで、いわゆる「金太郎塗り」と呼ばれる塗り分けであった。後述するデハ200形がデビューした1955年から、デハ200形に合わせて淡い緑色とクリーム色の二色になった。渋谷―二子玉川間が廃止された時に、デハ60形とデハ200形は廃止され、他の形式も数を減らした。残った車両は、この時より次第にライトグリーン一色に塗り替えられた。これにより一時的に世田谷線の車両は緑一色となる。

 世田谷線に新車が入り、旧型車両であるデハ70形、デハ80形が引退する直前、デハ8081Fは「玉電色」と呼ばれる、塗り分けは玉電時代のデハ80形と同じ「金太郎塗り」であるが、旧塗装より淡い緑色とクリーム色のツートンカラーとなった。

[2]デハ200

 この車両は[1]の車両と比べると比較的新しいが、運転や保守のしづらさから玉電廃止と同時に廃車となっている。この車両は玉電の顔とも言える代表的な車両であるが、塗装的な意味でもまた玉電の新しい特徴を作ったと言える。従来のデハ80形より淡い緑色とクリーム色でデビューし、従来型の車両がこれに合わせて塗装を変更することとなったことは[1]で述べた通りである。これは玉電に新しい色をもたらしたということである。また、塗り分けも従来の金太郎塗りと異なり、車体下部にも緑色をおき、クリーム色を太い帯のようにした。

 

(左)宮の坂駅に保存されているデハ80形(宮の坂駅 2016.06.12 

(右)電車とバスの博物館に保存されているデハ200形(電車とバスの博物館 2017.03.25 

 

[3]デハ150

 この車両はデハ200形より新しいが、形状的にはデハ80系列を受け継いだようなスリムで非連接の構造となっている。塗装的にも、デハ80のような上下で二色の塗り分けとなっている。玉電が廃止され、世田谷線が分離されると、緑一色になり、のちに車体改造を受けると、側面下部のみがステンレスの銀色となった。

 

2)現役の車両

 1999年から2001年にかけて世田谷線の近代化のために全車両が現在も走る300系に置き換わった。この時、300系はラッピングにより、一編成ごとに色の違うカラフルなデザインとなった。これにより、世田谷線にカラフルなイメージがつくようになった。

 デビュー当初は色々な会社によりラッピング広告がなされ、広告により色も変わっていたが、2000年代後半からは色は安定し始めた。小さいラッピング広告が変わることはあっても全体の色は変わらないでいたが、2017年に305Fが玉電110周年記念として茶色になり、9月に入るとそれまで赤だった308Fが白い招き猫ラッピングになるなど、最近になって色の変化が昔のように活発になりだしてきている。

 では編成ごとに現在の色を見ていこうと思う

 301F…玉電カラー(アルプスグリーンとクリーム) 302Fモーニングブルー

 303Fクラシックブルー             304Fアップルグリーン

 305F…玉電110周年記念塗装(茶色と白)     306Fレリーフイエロー

 307Fブルーイッシュラベンダー     308F…玉電110周年幸運の招き猫(白)

 309Fバーントオレンジ             310Fターコイズグリーン

 

(左)玉電カラー、200形を模した色となっている(若林―西太子堂間 2017.10.01 

(右)ターコイズグリーンとレリーフイエロー(松原―下高井戸間 2014.02.09 

 

(左)クラシックブルー(松原―山下間 2014.11.16 

(右)モーニングブルー(松原―山下間 2015.04.15

 このように10編成全て違った色をしている。305F20174月より、308Fは同年9月より現在の色となっており、この特別塗装は20183月までの予定となっている。301Fの玉電カラーは、もともとグリーンでサザエさんのラッピングがしてあったものを、2005年に200形の登場50周年を記念して現在の色になった。これが好評となり、現在までこのカラーとなっている。このため、305Fなどの特別塗装も、好評となればこのまま標準の塗装となっていくのかもしれない。これからに期待である。

 

(左)玉電110周年記念塗装(若林―西太子堂間 2017.10.01 

(右)玉電110周年幸運の招き猫(若林―西太子堂間 2017.10.01

 

(左)305Fの記念塗装以前の塗装、チェリーレッド(松原―山下間 2015.04.15 

(右)308Fの招き猫以前の塗装、サンシャイン(松原―山下間 2014.11.16

 

 また、せたまるについても触れておこうと思う。せたまるとは世田谷線専用のIC乗車券であり、2002年に導入されたのち、PASMOなどの普及により2012年に廃止された。この乗車券はオレンジ色をしており、専用のキャラクターもいた。当時の世田谷線にはせたまるをラッピングした車両が走っており、前半はせたまるの色に合わせたオレンジの309F、後半は308Fが担当した。

 また、デビュー当初の資料を見ると、塗装は前面と側面上部のみで、側面下部はステンレスの銀色が輝いていたが、2006年の写真では側面下部にまで塗装がされているため、この頃までに変更があったものと思われる。

 

(左)309Fのせたまるの塗装、キャラクターに合わせたオレンジ(三軒茶屋 2006.06.14 

(右)308Fの招き猫以前の塗装、サンシャイン(世田谷 2011.02.24

 

3.

 実は世田谷線でカラフルなのは車両だけではない。世田谷線には「ステーションカラー」が導入されているのだ。

 ではそもそもステーションカラーとは何だろうか。ステーションカラーとは駅ごとに色を割り当て、それぞれの駅をそれぞれの色で特徴付けるシステムである。これはもともと外の景色が見えなく、駅も単調で同じ雰囲気になりがちな地下鉄で、駅名が聞こえなくても見えなくても、また酔っ払っていても自分の降りる駅を色で判断できるようにするために開発されたもので、地下鉄で主に採用されている。例えば、東京メトロでは、南北線や副都心線で採用されている。

 東急では、新玉川線(現在の田園都市線渋谷―二子玉川間)が開業した時に同区間に採用された他、目黒線でも採用されている。特に田園都市線で行われているものは、ホームドアだけといった部分的なものではなく、ホームの内装全体がステーションカラーとなっており、とてもはっきりしている。ここまでわかりやすいものではないが、世田谷線にも一部の駅にステーションカラーが導入されている。世田谷線は全区間地上を走るため外の景色から駅を判断することはできるが、終着駅である三軒茶屋駅、下高井戸駅を除く8駅は同じような構造をしているために、導入されたのだと推測される。これが導入されたのは現行の東急300系の導入と同じ時期で、新型車両の導入に伴うホームのかさ上げなどのバリアフリーや、全ホームへの屋根の取り付けなどの近代化工事が行われた時期である。そのため、屋根を取り付けるついでに導入され、またバリアフリーの一貫としてステーションカラーが考えられていたと推測できる。

 設置場所は、ホーム壁の上部、駅名標の上あたりの高さに一本線で書かれており、また駅名標を含む総合案内板の下部にも塗られている。

 では各駅のステーションカラーを見ていこう。

 三軒茶屋:なし(終着駅であり、判別可能のため)        西太子堂:赤

 若林:オレンジ        松陰神社前:黄色        世田谷:緑  

 上町:水色(色褪せが激しい) 宮の坂:不明(色褪せが激しい) 山下:青

 松原:紫(色褪せが激しい)  下高井戸:なし(終着駅であり、判別可能のため)

 このような状況となっている。特に上町、宮の坂、松原では色褪せが激しく、おそらく最初の導入以降塗り直されていないのだと思われる。2001年に導入されたのち、あまり定着しなかったために塗り直されずそのまま放置され、東急からも何の発表なく、そのままになっている。そのため資料がほとんどなく、もともと何色に塗られていたのか、その後どうなったのかといったことが全く不明である。

 

(左)駅名標の上、ホーム壁の上部に黄色い帯が入っている(松陰神社前 2017.10.09 

(右)総合案内板の下に赤色が塗られている(西太子堂 2013.12.15

 

4. まとめ

 このように世田谷線は車両も駅もカラフルであり、車両ごとに、駅ごとに違った色をしており、これを探してみるだけでもすごく楽しい路線である。この文章を読んだ皆さんが世田谷線を巡ってみたいと思い、お気に入りの色を探していただけたら幸いである。

 

*写真は全て筆者が撮影した

 

5. 参考文献

『鉄道ジャーナル』20012月号 (鉄道ジャーナル社)

旧玉川線200形車両登場50周年を記念して、 世田谷線で懐かしの「玉電カラー」電車を運行 (PDF)”. 東急電鉄 (2005.11.07)

玉電開通110周年記念イベントを実施〜招き猫のラッピングや招き猫型吊り手の「幸福の招き猫電車」を運行〜 (PDF) - 東京急行電鉄 (2017.08.31)

世田谷線に更新車両「300系」を導入 平成11711日(日)から営業運転開始 (PDF). 東急電鉄 (1999.6.24)

“世田谷線のバリアフリー化を推進します 車両・ホームの改良工事によりノンステップ化。併せてホームへのスロープ設置 (PDF). 東急電鉄 (2001.1.29).

全て1020日閲覧


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