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西武101系系列の電気連結器の色

平成28年度入学 竹トラ

 

1. はじめに

 西武101系系列とは1969年に製造を開始した旧101系、1979年に製造を開始した新101系、および1980年に製造を開始した301系を指す。301系は実際のところ8両固定編成の新101系であり、2両編成、4両編成の新101系と外見や制御方式に差異はない。また、旧101系と新101系、301系は全て抵抗制御方式であり、制動装置は抑速ブレーキを装備した発電ブレーキを併用する電磁直通ブレーキである。発電ブレーキとは制動時にモーターを発電機として用い、装備している抵抗器に電流を流すことで、運動エネルギーを電気エネルギーを通じて熱エネルギーと変換して逃がすことでブレーキ力を得る制動の仕方である。抑速ブレーキとは、発電ブレーキを利用して下り坂で速度が上がるのを防ぐためのブレーキで、勾配の多い路線を走る電車に装備されることが多い。西武旧101系は1969年に開通した西武秩父線に投入するために開発されたため以上のようなブレーキ装置を装備していた。1990年ごろから廃車が開始され、201710月現在は新101系のワンマン改造車4両編成10編成の40両のみが西武多摩川線や同多摩湖線を中心に運用されている。新101系は、過去に乗り入れていた秩父鉄道、近江鉄道や伊豆箱根鉄道などの私鉄に譲渡され運用されている車両も多く存在する。

 

(左)西武旧101系(武蔵丘車両検修場 撮影日時不明)筆者家族撮影

(右)西武新101系 痛みが激しいが比較的原形をとどめている(彦根駅 2017.09.14

西武新101系ワンマン車 現在はワンマン車のみ運用されている(萩山駅2017.07.12

 

 

(左)近江鉄道100形(元新101系) 近江鉄道で改造の上運用されている(米原駅 2017.09.14

(右)秩父鉄道6000系(元新101系)大規模な改造の上運用されている(長瀞駅付近 2015.04.29

 

さて、西武101系系列は車体塗装が時代によって異なることを知っている人も多いだろうと思われるが、実は車体塗装だけでなく、先頭車の電気連結器(以下電連と表記する)の色も時代や編成によって異なっていた。電連とは先頭車同士での連結時において、車両や編成を電気的に接続し、車両のさまざまな制御を行う電気信号を車両間や編成間で伝えるために存在する。多くの車両では連結器本体の下に取り付けられることが多い。連結していない際に見えているのは電極のカバーであり、連結時には電極が互いに接して電気的に接続する。ここではカバーを含めた部分を電連と呼ぶことにする。もちろん、他の編成と非常時以外に連結しない車両などには電連が装備されていない場合もある。西武101系系列の電連の色の差や色が異なっていた理由について述べていく。以下に西武鉄道における電連の有無の例を提示するので、先頭車下部の連結器に注目してほしい。

 

(左)西武30000系 10両固定編成のため電連は装備しない(西武柳沢駅付近2016.08.16

(右)西武新2000系 頻繁に編成の増解結をするため電連が装備されている(同上)

 

2. 通常の編成の電連

 西武101系系列は製造時には灰色で塗装された通常の電連を装備していた。ただし、走行により汚れや錆がつき、黒色や赤茶色に近い色をしている場合もある。1969年の登場時、西武旧101系は従来の車両とは制動方式が異なっていたため、連結して走行することはできなかった。しかし、黄色塗装(黄色とベージュのいわゆる旧塗装)の車両は旧101系以外に存在せず、従来の通勤型車両は赤色とベージュの塗装がされており赤電[1]と呼ばれていた。赤電の形式についてはここでは深く取り扱わないこととする。車体の塗装で制動方式の異なる車両同士の連結ミスは防げたため、特に電連に区別のための塗装はされなかった。その後、一部の西武101系は以下の章で説明する改造を受けるが、改造を受けなかった編成の電連の色は灰色のままであった。以下に赤電の具体的なイメージとして、赤電塗装の復刻イベント時の写真を掲載する。

 

(左)近江鉄道820系(元西武401系)「赤電」カラー復刻編成(彦根駅 2017.09.14

(右)西武旧101系 赤電イベント時(横瀬車両基地 2001年ごろ)筆者家族撮影

 

3. 701系、801系、401系との併結に対応した黄色の電連(黄電連)

 前章の2章で述べた赤電であるが、赤電のうち、601系中間車、701系および801系については冷房化改造と制動装置の更新が行われることとなり、1975年以降改造が行われた。601系中間車は改造後701系に組み込まれた。なお、411系については制御装置についても701系と同様のものに更新し401系となった。この改造で、701系、801系、401系(以下701系系列と呼ぶ)は101系系列とほぼ同じ制御方式と制動方式を採用することになり車体塗装も黄色一色に改められた。しかし、701系系列は制動方式こそ101系系列と同じ電磁直通ブレーキとなったが、発電ブレーキと抑速ブレーキを装備せず、とくに抑速ブレーキの回路のため混結ができなかった。車体塗装は701系系列が黄色一色、101系系列は黄色にベージュの帯を巻くツートン塗装で区別されていた。一方、701系と801系の前面のデザインは旧101系と酷似しており、701系系列と旧101系の混結を防ぐため701系系列の電連が黄色に塗装された。その後、新101系が増備されたこともあり、とくに西武新宿線系統において101系系列と701系系列の混結を可能にして運用を共通化するために、1981年以降101系系列の一部の編成に対して抑速ブレーキ回路を開放する改造を行い、701系系列との混結を可能にした[2]。しかしこの改造を受けた101系系列は改造を受けていない101系系列とは連結できないため、701系系列と同様に電連が黄色に塗装されることになった。1997年に701系系列が全廃されると、この改造は取りやめとなり、改造を受けた編成は抑速ブレーキ回路をもとに戻した。また黄色とベージュのツートン塗装であった101系系列は塗装工程簡略化のため黄色一色の塗装に改められていくことになった。

 

(左)黄色一色の車体塗装であるが復刻した黄電連を装備した西武301系(彦根駅 2017.09.14

(右)流鉄2000形(元西武701系)旧101系と前面が酷似している(流鉄ホームページから引用)

 

4. 秩父鉄道乗り入れ用編成の白い電連(白電連)

 19894月以降、西武鉄道は秩父鉄道への乗り入れを開始した。秩父鉄道に乗り入れる際はそれぞれ4両編成の三峰口行きと長瀞行きを併結し、横瀬駅で三峰口行きと長瀞行きの編成を解結して秩父鉄道に乗り入れる[3]。乗り入れに伴い4000系が旧101系の走行機器を流用する形で製造されたが、一方で新101系の一部編成も秩父鉄道への乗り入れのための改造を受けた編成が存在する。改造内容はパンタグラフの交換と横瀬駅での増解結のための自動連結解結装置の装備である。パンタグラフは新2000系などと同様のひし形パンタグラフPT4320-S-A-Mに換装され屋根上の印象が少し変化した。連結器への自動連結解結装置の装備した先頭車は自動連結解結装置を装備していない先頭車とは連結できなくなったため、区別のために電連が白色に塗装された。なお、4両編成の両端の先頭車ではなく4両編成を2本連結した際に連結される先頭車のみに連結器への改造が行われた。また改造を受けた新101系が乗り入れ運用から撤退しても、これらの改造内容は復元されることなかった。ちなみにこれらの乗り入れ編成は秩父鉄道と伊豆箱根鉄道に譲渡されたが、パンタグラフはそのままのため西武鉄道時代の歴史が残っていると言えよう。秩父鉄道への譲渡に際しては、譲渡車両が自走して譲渡先へ移動するというまれなケースとなっている[4]

 

(左)西武新101系 参考文献をもとに白電連を再現した模型(筆者自宅 2017.10.09

()西武4000系 201710月現在も秩父鉄道乗り入れを行っている(秩父駅 2015.04.29

 

5. まとめ

 今回の簡易線駒場祭号のテーマは「色で見る鉄道」であり、それに沿った記事とした。西武鉄道といえば車体塗装の変遷こそ注目されやすいが、この記事では視点を変えて電連に注目してみた。電連の色の変化は目立たないものかもしれないが、車両の性能や運用において意味をもっていることがわかるであろう。電連について述べるうえで西武鉄道の車両形式などにも軽く触れたが、この記事では深く扱っていないので、興味をいだいた読者の方がもしいらっしゃれば、ぜひとも調べていただきたい。

*写真は(特記以外)すべて筆者が撮影した。

 

6. 参考文献

西尾恵介他 『日本の私鉄 <2> 西武』(保育社・1980年)

小林尚智他 『日本の私鉄 <12> 西武』(保育社・1990年)

『鉄道ピクトリアル 20024月号 臨時増刊』(株式会社電気車研究会・鉄道図書刊行会)

『鉄道ピクトリアル 20069月号』(株式会社電気車研究会・鉄道図書刊行会)

「西武鉄道ホームページ」

    https://www.seiburailway.jp/2017109日閲覧)

「流鉄ホームページ」

    http://ryutetsu.jp/traingallery.html2017109日閲覧)

「鉄道ファン 鉄道ニュース『700C編成3本の側面JRマークが青に』」

http://railf.jp/news/2011/09/11/070600.html2017109日閲覧)


[1] 赤電は701系(改造前)や601系、411系などのことを指し、101系とは異なる抵抗制御方式と旧来の制動方式(自動空気ブレーキ)を採用していた。赤電であれば制動方式が統一されていたので形式に関係なく混結ができた。

[2] この改造では発電ブレーキ自体は使用できるうえ、もともと101系系列は701系系列と加減速性能が異なるので、701系系列と101系系列を併結した編成では前後衝動が発生する恐れがあったが、実際には701系系列と101系系列の併結は続けられた。一方で冷房化改造と制動装置の更新の際の編成組み換えで余剰となった701系の先頭車を新101系の走行装置(抑速ブレーキ回路を開放)を用いて電装し、新1012両編成と同様の組成とした501系(三代目)では701系系列との併結時に前後衝動が発生し乗り心地面に問題を抱えた。この点に関しては現在では検証が難しいが研究の余地がある。

[3] 以前は寄居まで乗り入れていたが、現在は長瀞までの乗り入れとなっている。

[4] 他の例としては700系新幹線のJR東海からJR西日本への譲渡などが挙げられる。


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