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京阪新塗装について

平成29年度入学 京キチ 

 

 京阪電気鉄道は20085月から20136月にかけて、本線系統の全編成を対象に塗装変更を行った。これは、200810月の中之島線開業および、新型車両3000系の投入に合わせて行われた。本記事では、新塗装に重点をおき、全体としてのコンセプトや各塗装の特徴などを説明する。

 

1.      塗装変更全体について

 この塗装変更には大きく二つの意味がある。一つ目は中之島線開業や京阪電車100周年という節目を迎え、グループの経営ビジョンである「Vision100 “進化する京阪」を元に新しい京阪を発信するということ。そしてもう一つは、9000系や10000系などが従来の車両と異なる塗装をまとっていたことに対し、車両を見るだけで利用者が種別を判別しやすいよう、車両区分を再構築するということである。

 今回は塗装デザインとして初の外部委託が行われ、GKデザイン総研広島が担当した。同社は従来から京阪電車の時刻表や駅名標のデザインの担当実績があり、外部委託により新鮮かつ斬新な塗装への変更が目指された。塗装変更にあたっては、京阪の名の由来でもある京都と大阪の文化などから連想して「風流の今様」というコンセプトが決められ、ここから「花鳥風月」という言葉を元に展開が図られた。「花」は京阪電車の塗装やラッピング、「鳥」は特急の鳩マーク、「風」は疾走する電車の姿として解釈されている。そして従来無かった「月」のモチーフが車体のデザインに取り入れられ、欠けた月のような円弧形がエレガント・サルーン、コンフォート・サルーン、6000系以降のシティ・コミューターの前面デザイン、さらにエレガント・サルーンのダブルデッカー部分側面のデザインに取り入れられている。3000系や13000系は、前照灯のデザインも丸みを帯びており、「月」をより分かりやすく表現したものとなっている。これは新塗装の大きな目玉の一つである。

 新塗装では、3000系の導入に伴い従来の塗装も同時に再編され、次節で取り上げる3種類に分類された。前述のコンセプトを実現することだけでなく、9000系や10000系の登場時に従来車と異なる塗装が施されており、さらに新型車両が加わると利用客の混乱を招く可能性があるとされたことも一つの理由である。

 3種類の中で、特にコンフォート・サルーンは従来の車両とは一線を画す塗装となっており、新線を走行する車両として新しいイメージが構築されている。一方その他の2種類はそれぞれ従来の特急車、通勤車に用いられていたツートンカラーを連想させる色を用いつつ、色の濃淡を反転させて新鮮さが表現されている。さらに、新たな構成として上下の塗装の境目に帯があしらわれ、塗装のアクセントとなっている。

 

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前面に「月」のデザインが取り入れられた7000系車両 (7001編成 撮影地:出町柳駅)

 

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前照灯を含め「月」がデザインされている13000系車両 (13001編成 撮影地:枚方市駅)

 

2.      それぞれの新塗装について

 

・エレガント・サルーン 優等車両 クラス1

対象車両:8000

使用色:エレガント・レッド、エレガント・ゴールド、エレガント・イエロー

 特急用車両8000系専用の塗装である。1951年から使用されていた従来の特急車塗装で使用されていたカーマイン・レッド、マンダリン・オレンジを連想させる赤色、黄色系の色が使用され、伝統が受け継がれている。その一方で上下の色調が反転され、新鮮さも演出されている。また赤色と黄色の境目には金色の帯があしらわれており、全体的にエレガントの名にふさわしい配色となっている。3色を合わせて十二単や紅葉、お祭りといったイメージが表現されている。また、2017820日より8両編成のうちの1(6号車)が「プレミアムカー」となり、赤色を主体としてより金色を用いた塗装に変更された。特に扉部分は全面が金色となり、高級感が演出されている。

 

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エレガント・サルーン塗装 (8006編成 撮影地:香里園駅)

 

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プレミアムカー (8003編成 撮影地:大和田駅)

 

 

・コンフォート・サルーン 優等型通勤車両 クラス2

対象車両:3000

使用色:エレガント・ブルー、スマート・シルバー、アーバン・ホワイト

 新塗装登場時の最新形式であった3000(2代目)用の塗装である。これまで京阪電車ではほとんど用いられてこなかった紺色を基調とし、窓より下の部分は白色、境目には銀色の帯をまとっている。新路線に投入される、従来とは全く異なる新型車両を大きく特徴づけるデザインである。特にアーバン・ホワイトは日本一白い塗装とも言われており、これまで白が用いられてこなかった京阪のイメージを大きく変える塗装となっている。この塗装により、京の紺袴や石庭、大阪の淀川や水都中之島といった、路線両端の風流なイメージが表現されている。

 なお、3000系は前面デザインの変更が進められており、新たにディスプレイが設置されて快速特急・特急運用時に装飾灯が使用されている。

 

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コンフォート・サルーン塗装 (3003編成 撮影地:枚方市駅)

       前面ディスプレイ設置改造済・運用前 (2017831日撮影)

 

・シティ・コミューター 一般型通勤車両 クラス3

対象車両:1000系、2200系、2400系、2600系、5000系、6000系、7000系、7200系、9000系、10000系、13000

使用色:レスト・グリーン、フレッシュ・グリーン、アーバン・ホワイト

 様々な形式が存在する3ドアロングシート車両共通の塗装として、青緑系の濃緑色を基調としたデザインである。従来の基調色であった黄緑色は帯の色となり、従来塗装の色を残して伝統を受け継ぐ姿勢を示す一方、車両の下半分を真っ白に塗装するという斬新な色づかいも見せている。緑豊かな沿線風景とともに、京阪電車の新たな方向性を表現した塗装となっている。

 通勤車両には置き換えが進んでいる形式もあるが、現在は本線系統全てのロングシート車両にこの塗装が施されているほか(ラッピング車両を除く)、石山坂本線や京津線で使用される車両についてもこの塗装への変更が進められている。

 

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シティ・コミューター塗装 (1504編成 撮影地:香里園駅)

 

3.      今も残る旧塗装

 八幡市と男山山上を結ぶ男山ケーブルの車両は、特急用旧塗装のまま運行されている。今のところ塗装変更の発表はないため、しばらくの間は旧塗装を楽しめるのではないかと思われる。また、富山地方鉄道では旧3000系が10030系「ダブルデッカーエキスプレス」として運行されている。京阪時代の旧塗装を受け継ぎ、またダブルデッカー車、テレビカーもそのままで運行されているため、かつての京阪特急の雰囲気を存分に堪能することができる。

 京阪電車寝屋川車庫には、2820号、2615号が教材車として留置されているが、こちらは旧塗装のままである。(2017831日時点 筆者確認)

 

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富山地方鉄道 ダブルデッカーエキスプレス(10034編成 撮影地:電鉄富山駅)

 

4.      参考文献

DJ 鉄道ダイヤ情報  NO.295 200811月号 交通新聞社

・鉄道ピクトリアル 「特集 京阪電気鉄道」 20098月臨時増刊号 電気車研究会

・鉄道ピクトリアル アーカイブスセレクション25 「京阪電気鉄道 1960-70」 20134月号別冊 電気車研究会

・カラーブックス 「日本の私鉄 京阪」 井上広和・藤原進 著 1999年 保育社

・「京阪線車両のカラーデザインを一新します」 京阪電気鉄道 公式ホームページ

 http://www.keihan.co.jp/corporate/release/orig_pdf/data_h20/2008-04-15-02.pdf (2017101日閲覧)

・「車両デザインコンセプト」 京阪電気鉄道 公式ホームページ

 https://www.keihan.co.jp/traffic/railfan/train-design/ (2017101日閲覧)

 


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