南武線の車両
平成29年入学 東ウエ
南武線の沿革
明治時代に入った日本では、鉄筋コンクリートが普及し、その材料となる砂利の需要が高まっていた。そのような情勢下で、私鉄の南武鉄道は、多摩川の砂利運搬を目的に、1927年に川崎―登戸間・矢向―川崎河岸間の路線を開業させた。
当初は沿線人口が少なく、貨物中心の路線だったが、昭和10年代に沿線に相次いで工場ができると、通勤利用者が急増し、ラッシュ時には乗り切れないほどの混雑路線となった。太平洋戦争が開戦した1941年には「改正陸運統制令」により、全国の重要路線の国有化が行われた。沿線に軍需工場を多く持つ南武鉄道も国有化の対象となり、1944年には国が南武鉄道を強制的に買収し、南武鉄道の路線は「南武線」となった。
戦後は高度経済成長に伴い利用客が急増し、同時に路線の改良も進められて、1966年には全線複線化された。1969年には川崎〜登戸間で快速電車の運転が開始されたが、登戸での普通電車との接続の悪さゆえに利用客には不評で、この初代快速は9年で廃止された。快速電車が復活したのは初代快速の廃止から約32年後の2011年4月9日のことで、その後も停車駅の見直しを繰り返しながら、現在は川崎―立川の全線で快速運転を行っている。
(左)E233系8000番台車両側面の行先表示器。先代の209系とは異なりフルカラーLEDを搭載している。各駅停車の種別色は黄色である。(2017.10.01 川崎駅)
(右)快速の種別色は赤色である。(2017.10.01 川崎駅)
現在の車両
E233系8000番台
E233系8000番台ナハN28編成 (2017.09.28 武蔵小杉駅)
2014年10月4日に運用を開始した。
仕様は基本的に他線のE233系と変わらないが、南武線を特徴づける仕様として、先頭車の中央大窓下と乗務員室扉後部に南武線ロゴマークの貼り付けが行われた。このロゴマークは、「明るく弾む伸びゆく沿線」をコンセプトに、南武線沿線の有名建築物や「NAMBU LINE」の文字を入れたデザインとされた。路線ロゴマーク貼り付けは横浜線用E233系6000番台でも行われたが、同線の車両は中間車の中央大窓下及び先頭車前面にも貼り付けられている。
また、座席モケットの柄は優先席を除き南武線オリジナルのものとなった。
35編成210両が運用中。
帯部分のデザインは車両の左右で異なる。(2017.09.28 武蔵小杉駅)
乗務員室扉後部のロゴマーク (2017.09.28 武蔵小杉駅)
(左)ドア上のLCD。(2017.10.01 川崎駅)
(右)E233系8000番台の座席。(2017.10.01 川崎駅)
E233系8500番台
E233系8500番台ナハN36編成 (2017.09.28 武蔵小杉駅)
青梅・五日市線用E233系0番台の1編成6両(青670編成)を改造・改番して南武線向けに導入した車両。導入に当たり、以下の項目は既存のE233系8000番台に合わせた仕様に改造された。
車両外部のカラー帯の張り替え。ドア上LCDを縦横比4:3のものから、横長の16:9のものに交換した。LCD交換に伴い、ドアチャイムがE233系2000, 5000, 6000, 8000番台と同じタイプのものになった。
一方、以下の項目は0番台と同じ仕様のままであり、E233系8000番台との相違点となっている。
正面の列車番号は行先の横に表示。座席モケットの柄は0番台仕様のまま。半自動ドア用スイッチが付いている。6号車のクハE232-8528に電気連結器が付いている。ホーム検知装置がない。フリースペースは1号車のみに設置。パンタグラフ脇のフック掛けがない。
ドア脇に半自動スイッチが残るE233系8500番台。(2017.09.28 武蔵小杉駅)
205系1000番台
2002〜2003年にかけて101系を置き換えるために南武支線に2両編成が3本投入された。編成はクモハ205形1000番台・クモハ204形1000番台からなるが、両車とも中間電動車のモハ205形0番台・モハ204形0番台に運転台取り付けなどの改造を施した車両である。帯色は、先代の101系が採用していた緑色とクリーム色に加えて、南武線のラインカラーである黄色を加えた3色となっている。
なお、JR西日本にも205系1000番台を名乗る車両があるが、JR東日本車とは無関係である。また、西日本車には制御電動車(クモハ)が存在しないのに対し、東日本車には制御電動車しか存在しないため、同一番号の車両が複数生じる状況にはなっていない。
過去の車両
101系・103系
1969年12月15日に川崎〜登戸間の快速電車として定期運用を開始した。この時は武蔵小金井電車区所属の付属編成3両を2本連結した6両編成を使用していた。1972年には南武線向けに101系の導入が開始され、1978年には旧型国電を完全に置き換えた。1982年からは103系の転入が開始された。101系・103系には中央線豊田電車区からの転入車もあり、黄色と橙色の車両が混結していることも珍しくなかった。また、1976年1月に浦和電車区から転入した車両は水色の車両であった。このように、南武線には首都圏の各路線の中古車両が多数配置され、さまざまの色の車両が運転されていたが、南武線にもラインカラーを定めることになり、その結果101系・103系は全車黄色に塗られた。
その後205系の導入に伴い、1991年3月に本線からは引退した。
南武支線には1980年に101系が導入された。塗装は当初は黄色だったが、1988年3月のワンマン改造時に塗装変更が行われ、クリーム色の車体に緑帯とされた。南武支線の101系はJR最後の101系として2003年11月28日まで活躍した。
205系0番台・1200番台
(左)205系0番台ナハ16編成 (2013.08.08 武蔵小杉駅)
(右)205系0番台・1200番台ナハ46編成 (2013.08.08 武蔵小杉駅)
1989年から導入が開始された、現在まで続く黄・橙・茶色の3色帯を初めて採用した車両。この3色は、それぞれ103系・101系・旧型国電をイメージしたもので、沿線住民へのアンケートに基づいて決められた。
一部編成には中間車(サハ205形)を先頭車化改造した車両(クハ205形1200番台・クハ204形1200番台)が連結されていた。先頭車化改造車が含まれる編成でも、中間車の番号は0番台である。
先頭車が0番台の編成は、2015年12月6日のナハ39編成の引退をもって消滅した。ナハ39編成の両先頭車には、11月16日より旧型国電風の「南武線→海外譲渡」のヘッドマークが掲出されていた。
2016年1月9日に、先頭車化改造車を含むナハ46編成を使用した「ありがとう運転」が川崎〜登戸間で行われ、これを最後に南武線の本線から205系は撤退した。
南武線を去った205系のうち16両は武蔵野線の増発用に充てられたほか、0番台の一部車両がインドネシアに譲渡された。
209系0番台
1993年5月のダイヤ改正で横浜線の列車を増発する際、南武線の205系を横浜線に転用することになったため、その補充として209系が1編成6両(ナハ1編成)新造された。その後、1996年3月22日のダイヤ改正での南武線増発に伴い1編成6両(ナハ32編成)が追加導入され、合計で2編成12両が導入された。帯色は205系と同じく黄・橙・茶色の3色。
仕様は基本的に同時期に製造された京浜東北線の209系と同等であるが、VVVF装置の仕様が若干異なるようで、走行音の違いとなって現れていた。
製造時期の違いから、最初に導入されたナハ1編成はドアエンジンが空気式であるが、2編成目のナハ32編成は電気式となっている。
ナハ1編成は、保守上の問題から、209系2200番台に置き換えられて廃車された。
ナハ32編成はE233系8000番台に置き換えられる形で廃車され、これにより209系0番台の営業用車両は消滅した。
209系2200番台
209系2200番台ナハ54編成 (武蔵小杉駅 2013.04.28)
京浜東北線で使用されていた209系0番台を短編成化・機器更新を行って導入した車両。合計3編成が導入されたが、導入の目的は、
・209系の空気式ドアエンジン車(ナハ1編成)と電気式ドアエンジン車(ナハ32編成)が混在している状態では、保守に手間がかかるので、空気式ドアエンジン車を廃車して電気式ドアエンジン車に統一する目的。
・老朽化が激しい仙石線103系を置き換えるために、南武線用205系1200番台を改造して205系3100番台化することになったので、南武線の車両不足分を補充する目的。
・横須賀線武蔵小杉駅開業に伴う南武線の増発。
であり、いわば3編成それぞれが「異なる目的」を持っていた。
E233系8000番台の導入に伴い、ナハ52・ナハ54編成は廃車になった。ナハ53編成はE233系8000番台導入完了後もしばらく運転されていたが、E233系8500番台と入れ替わる形で南武線を離れ、房総地区の自転車旅行者向けの列車「BOSO BICYCLE BASE(B.B.BASE)」に改造された。
*写真は(特記以外)全て筆者が撮影した。
参考文献
生田誠『南武線・鶴見線街と駅の1世紀 懐かしい沿線写真で訪ねる』(アルファベータブックス・2015年)
『鉄道ファン』2004年7月号・2009年11月号・2015年2月号・2015年5月号(交友社)
『鉄道ピクトリアル』2002年11月号・2016年2月号(電気車研究会)
「鉄道トリビア (259) JR南武線、車体の帯はなぜ3色もある?」
http://news.mynavi.jp/series/trivia/259/ (2017年10月1日閲覧)