コンテンツ

ホームに戻 る

簡易線 web 公開トップに戻る

令和 2 年駒場祭号⽬次に戻る

道のつく駅

令和2年度入学 村イオ

 

1.   「道」のつく駅はいくつあるか

 今回、この記事では「道」という字のつく駅について探ることにした。そもそも、「道」という字を含む駅名はいったいいくつあるのだろうか。筆者はひとまずJTB時刻表を手にとり、人力による検証を試みた。しかし、作業を進めるうちに膨大な作業量になる上、どうしても見逃しが発生することに気づき、人力での検証は不可能と判断した。そこで、ネット上に公開されているデータベースを利用することにする。今回は株式会社コードプラスが提供している「駅データ.jp」によるデータベースを利用させていただく。全国の駅名が網羅されたデータがcsv形式でダウンロードできる。Csvファイルと簡単なpythonを使ったプログラムを使えば、ものの数秒で探したい駅を抽出することができる。時刻表にも温かみがあり大変よいが、パソコンはやはり便利である。「道」のつく駅名をデータから検索した結果、

 

甲州街道 住道 四街道 水道橋 七道 鉄道博物館 神鉄道場 青梅街道 道場 南宍道 JR俊徳道 桜街道 馬道 海ノ中道 道ノ尾 北海道医療大学 尾道 表参道 会津山村道場 猪田道 大街道 北水海道 上道(岡山県)上道(鳥取県) 阪神国道 馬車道 天道 新道東 道法寺 林道 鳥羽街道 水道町 道川 海山道 道後公園 国道 俊徳道 源道寺 我孫子道 西川緑道公園 道後山 八栗新道 六甲道 道上 水海道 宗道 道後温泉 草道 東尾道 宍道 宗吾参道 北参道 春日野道 車道 九州鉄道記念館 大道 道成寺 立道 道徳 道場南口 道明寺 朝倉街道

 

62駅がヒットした。都道府県が47あることを考えると、62という数はそれほど多くないように感じられる。ちなみに、「路」のつく駅は36駅あった。

 

2. 分類でまとめる

 これらの駅名を眺めると、いろいろなパターンがあるのに気づく。例えば、「青梅街道」は実際に存在する青梅街道という道の名前がついており、青梅街道のそばにあるということが推測できる(実際に青梅街道駅は青梅街道の真横にある)。それに対して、「宗道」は道という字それ自体が地名に含まれており、roadとしての道が要素に含まれるかどうかははっきりしない。ここでは、駅名に「道」という字が含まれることになった理由ごとにパターン分けを行いたい。

 

(1)現在も駅名通りの名称の道の近くにある

 青梅街道、甲州街道、朝倉街道、桜街道などが該当。単純明快でわかりやすいパターン。鉄道路線と道路が交差する地点の近くに立地する駅に対し、所在地をわかりやすくするためにつけられる。ほとんどの場合は街道が近くに通るが、例外あり。特に鳥羽街道駅は本来の鳥羽街道からかなり離れており、最短ルートでも鴨川を隔てて約2.6kmもある。徒歩に直すと35分ほどかかるので、鳥羽街道付近を目的地とする場合使わないほうがよい。

 また、実在する道が由来の駅名でも、固有名詞からきていないものもある。鶴見線の国道(こくどう)駅がこれに該当する。由来は国道12号線が近くを通っているからだが、単に国道駅と名付けられている。また、これに似たケースで、阪急電鉄の「阪神国道(はんしんこくどう)駅」がある。一見「阪神+国道」で、国道駅に阪神電鉄の駅を示す阪神という字がついているように見えるが、実はこの阪神は「阪神国道」という国道2号線の愛称に由来するものである。関東育ちの筆者からすると戸惑ってしまう駅名である。

 

(2)地名に由来し、その地名は何らかの道に由来する

 四街道、上道(岡山県)、上道(鳥取県)などが該当。鉄道が開業する以前から存在する地名から駅名を付けたもののうち、その地名も何らかのroadとしての道に由来するパターンである。四街道の場合、その字の通り4つの街道が交差する点が地名になったものである。現在もその4つの街道と交差点は現存し、石碑もあるので、四街道はこのパターンの中でも1つ目のパターンに近い。岡山県の上道(じょうとう)駅は、高梁川を基準に京都に近いほうの地域を上道、遠いほうの地域を下道としたことに由来するらしい。同じ字で今度は「あがりみち」と読む鳥取県の上道駅は、京に船で行くとき、初めに通る道が由来である。地名を駅名にしているだけなので、鉄道と道の直接的な関わりは見られないことが多い。

 

(3)地名に由来するが、その地名の起源は道に関係しない

 宗道、天道などが該当。地名から駅名をつけたところは(2)と同じであるが、この場合地名に「道」という漢字がついた経緯は当て字や違う意味の道だったなど本来的には道路としての道に関係ない。宗道は近隣にある宗任神社の縁起に、安倍宗任公が神社に鎮座する際に「天の道、人の道を 行くを宗とする意味で宗道と地名を改めれば、人はすこやかに、地は栄えるようになるであろう」と告げたとあることに由来するらしい。この由来は伝説的な面が強いが、特に道に関係する異説が見当たらなかったのでこのくくりに入れた。

 

(4)寺院の名称に由来

 道成寺、道明寺などが該当。近くに駅名の由来となった寺院があり、その寺院の名称に道が含まれるパターン。ほぼ(3)と同じだが、数が多かったので別のくくりとした。ここで出てくる道は「仏道」の道か。

 

(5)その他

 北海道医療大学、鉄道博物館、水道橋など、ただ単に道という字が紛れ込んでいるだけの場合。

 

3. 実際に行ってみた

 今回私が訪れたのは、京成電鉄の宗吾参道駅である。この駅は、近隣にある宗吾霊堂(東勝寺)が駅名の由来になっている。この点からすると前述の分類に当てはめると(2)にあてはまる。しかし、googleマップなどで調べても、明確な宗吾参道という名前の道は存在しないらしい。そこで、今回は駅の調査を行うとともに、参道についても調査したい。

 宗吾参道駅は京成本線に所属する駅で、酒々井と公津の杜の中間に位置する。駅周辺には田園風景が広がるが、宗吾車両基地があるため車両基地見学のイベントが開催される際はこの駅が利用される。利用者は少ないが、駅構造は23線で、上り線が2本ある。佐倉駅よりも下り側にあるため、特急、通勤特急、快速、普通は停車するが快速特急は停車しない。

2階から南西方向(酒々井方面)を望む(宗吾参道駅 2020.08.26

 駅名の宗吾参道の宗吾とは、義民として有名な佐倉宗吾のことである。高校の日本史の教科書にも載っているので、名前を見たことのある人もいるかもしれない。4代将軍家綱の時代に、佐倉藩の暴政を家綱に直訴したことで死罪になったという伝説があり、村を守った英雄として宗吾が主役の歌舞伎もある。その佐倉宗吾を祀ったのが宗吾霊堂である。駅構内には、「宗吾霊堂はこちら 徒歩15分」との看板もあった。宗吾霊堂に行く人が多いことがうかがえる。また、駅を出ると「義民ロード 案内図」という看板もあった。義民という堅い言葉とロードという横文字が組み合わされているのが非常にミスマッチである。霊堂までの道を歩いたが、結局のところ「宗吾参道」と明確に示されている道路などはなかった。義民ロードが参道ということになるのだろうが、調べると佐倉宗吾に関連する史跡を結ぶ観光ルートが義民ロードとして整備されたのは2002年のことである。宗吾参道という駅名はそれ以前からあったので、結局のところ駅名にある参道とはどの道のことだったのかは判然としない。「宗吾霊堂」のような駅名ではなく「宗吾参道」にした理由もはっきりしない。多少霊堂から距離があることを考慮したのだろうか。

 いずれにせよ、現在の参道にあたる道は、概ね義民ロードのうち宗吾霊堂付近の部分といってよさそうである。門や石灯篭などもあり、参道としての雰囲気は十分出ている。

 

立派な門や石灯篭があるなど、駅前から参道の雰囲気が漂っていた(宗吾参道駅前 2020.08.26)

 

4. 参考文献

 

「駅データ.jp

https://ekidata.jp/

「東大和市の道路愛称」東大和市ホームページ(2020.10.03閲覧)

https://www.city.higashiyamato.lg.jp/index.cfm/31,62235,335,549,html

「ひとえきがたり 国道駅(神奈川県、JR鶴見線)」朝日マリオン・コム

https://www.asahi-mullion.com/column/article/station/1329

「四街道地名発祥の地」四街道市ホームページ

https://www.city.yotsukaido.chiba.jp/miryoku/smile/rekishi_bunkazai/history/yotsuchimei.html

「岡山市東区・上道地域の地名の由来」岡山の街角から

https://www.okayamania.com/chimei/bizen/joutou.htm

「上道地区」中海放送ホームページ

http://gozura101.chukai.ne.jp/p/page/chukai/independence/121ch/sozoro_data/backnumber/agarimichi/#:~:text=%EF%BC%AA%EF%BC%B2%E5%A2%83%E6%B8%AF%E9%A7%85%E3%81%8B%E3%82%89%E5%8D%97%E6%9D%B1,%E7%94%BA%E3%81%AB%E7%94%B1%E6%9D%A5%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

「天道神社・大将陣社 平安期の古戦伝承しのぶ」

https://horubai.jp/content/news/123

「宗任神社」茨城県神社庁ホームページ

http://travelstation.tokyo/station/kanto/kantetsu/joso/sodo.htm#:~:text=%E5%AE%97%E9%81%93%E3%81%AE%E5%9C%B0%E5%90%8D%E3%81%AF%E3%80%81%E9%A7%85,%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E3%81%A8%E3%81%84%E3%82%8F%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

 

写真は全て筆者が撮影した。


inserted by FC2 system