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JR北海道における経営の「傾き」

平成29年度入学 札サウ

 

1. はじめに

 当記事ではJR北海道の経営状況やその問題点を提示し、現在のJR北海道における経営難の責任がどこに所在するのか、並びにその解決策について論ずる。

 

2. JR北海道の経営状況

 JR北海道が昨年公表した平成28年度の損益計算書から、JR北海道の経営状況を紐解いていく。まず収益・損失の各項目に注目する。鉄道事業の営業収益は各項目の中で最も多い約832億円であるが、営業費がそれを大きく上回っており、全体としては約534億円の損失となっている。関連事業の営業収益は約62億円であり鉄道事業の10分の1以下であるが、約36億円の利益を生んでいる。ここで、関連事業とは不動産賃貸業、ホテル業、小売業など運輸業以外の事業をさす。その他の項目で特に目を引くのが、経営安定基金運用収益である。経営安定基金とは、1987年の国鉄分割民営化の際にJR3島会社(JR北海道・JR四国・JR九州)に交付された補助金である。この基金の運用益として、JR北海道は約236億円の収益を得ている。

 しかし、それでもなお平成28年度における純損失、すなわち赤字額は約126億円にのぼっている。同年度のJR四国の純利益が26億円、JR九州の純利益が447億円であることを鑑みると、JR北海道の経営がJR他社と比較して大変厳しいものだといえるだろう。

 

3. JR北海道の厳しい環境

 次頁に平成28年度のJR北海道の線区別収支状況を示す。最も右にある「営業係数」欄からわかるように、管理費を含めた営業係数はすべて100以上、すなわちすべての路線が赤字である。札幌圏においても例外ではない。これは冬季の除雪費用がかさむことや、そもそも北海道の人口密度が他都府県と比較して極めて低く、沿線人口が元々少ないことが原因として挙げられる。

 この状況は今に始まったことではない。国鉄分割民営化直後の昭和63年度におけるJR北海道の営業損失は約533億円におよんでいるが、これは平成28年度における金額を上回っている。鉄道事業によって生じる莫大な赤字を経営安定基金運用益により補填するという構図は、分割民営化当初から全く変わっていない。

 このような状況で、北海道のみを単独で分割民営化したのは明らかな失敗ではないだろ

1. JR北海道 平成28年度の線区別収支状況

(https://www.jrhokkaido.co.jp/press/2017/171107-2.pdf ,201843日閲覧)

 

 

うか。分割の方法を工夫し、一社内で黒字路線が赤字路線を補填できるように分割すれば現在のような悲惨な状況は起きていないはずである。例えば、平成28年度におけるJR東日本の営業利益は約4663億円であり、もし北海道、東日本を合同で分社化していたら、経営安定基金に頼らずとも難なく経営を維持できていたはずである。現在のJR北海道の惨状は、国鉄分割民営化当時の政治判断の誤りが原因だといえるだろう。

 

4. JR北海道再建のために

 JR北海道の大赤字が政治判断の誤りによるものであるならば、国が責任をもってJR北海道の経営を支援するのが筋だろう。北海道の過疎ローカル線を一社に押し付けたのだから、その責任は国自らがとるべきである。現状でも国は補助金の支給や無利子貸し付けを行っているが、少なくとも赤字をすべて補填できる程度の補助金を支出すべきである。さもなくば、旅客サービスはさらに低下し、安全への投資もさらに滞り、しまいにはJR北海道自体が倒産してしまうだろう。

 理想論ではあるが、もっともよい解決策はJR東日本との合併ではないだろうか。仮に合併が成立すれば、国の補助は不要となり、一社で十分に経営を保つことができる。しかし、JR東日本は株式上場している民間企業であり、いわば赤字の塊であるJR北海道との合併に株主が賛同するとは到底考えられない。やはり、分割民営化の時点で一社単独でも黒字となるように分割すべきだったのである。

 JR北海道も、赤字の原因が外部にあるとはいえ、可能な限り赤字削減への努力をすべきだろう。営業係数が極端に大きく、ローカル輸送に徹している区間などは、速やかにバス転換を行うべきである。鉄道は大量輸送、高速輸送できる点ではバスよりも優位に立っているが、少ない乗客をのんびり運ぶローカル線を維持する意味は果たしてあるのだろうか。無理に鉄道を維持するよりも、路線跡を車道化し、安い営業費で多い本数のバスを走らせたほうが、地元住民とJR北海道の双方にメリットがあるだろう。

 

5. 参考文献

「北海道旅客鉄道株式会社 平成293月期決算公告」

https://www.jrhokkaido.co.jp/corporate/mi/kessan/28/pdf/00_jrhokkaido.pdf 

「北海道旅客鉄道株式会社 平成28年度決算 社長談話」

https://www.jrhokkaido.co.jp/corporate/mi/kessangaikyou/28kessan.pdf  

(上記文献:201843日閲覧)

「国土交通省鉄道局 JR北海道の現状等について」

http://wwwtb.mlit.go.jp/hokkaido/bunyabetsu/tiikikoukyoukoutsuu/68shinpojiumu/290612/02tetsudoukyoku.pdf(201844日閲覧)

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