山手線のいろいろ
平成30年度入学 芦トラ
1. はじめに
今回、円環をめぐる鉄道がテーマである。このテーマで最初に想起されるものがおそらくこの山手線であろう。つまり、私は円環をめぐる鉄道のいわゆる権化について書くことになってしまったのである。東京のみならず日本に住む者にとっては紹介するまでもない山手線。個人的な話を書かせていただくと、私は関西出身であるが、小学生の頃、鉄道ファンの一員となるべく、山手線29駅の駅名をトイレに貼って暗記していた。その甲斐あってか、地元の大阪環状線19駅よりも早くに山手線29駅の名をすらすらと言えるようになった。運行形態などを書いてもよいのだが、皆様すでに既知の話となってしまうであろう。そこでこの度は関西人である私のユニークな視点で山手線について述べていきたい。
2. 基本データ
駅数:29駅
使用車両:E231系500番台、E235系
営業キロ:34.5㎞
運行形態:環状運転のみ
起点駅:品川
終点駅:田端
よく知られている通り、山手線は環状線ではない。田端―上野は東北本線、東京―品川は東海道本線である。円環をめぐっていない鉄道なのに、山手線=円というイメージはもはや日本人の頭から離れることはない。色々な捉え方があってよいのであろう。
3. 駅間の話―山手線徒歩旅
本来ならば山手線の車両、車窓、都市工学的意義等を詳しく述べるべきなのであろう。しかし、先ほども述べたようにこの会誌ではユニークな視点で書かせていただく。東京に出てきて右も左もわからない関西人が、東京がどんなものかを知ろう、といったときに様々な方法が考えられる。鉄道ファンの私は、山手線29駅を順番に歩いて回る、ということを思いついた。一人だと寂しいので、同じ関西出身の友人に同伴を依頼したところ、快く了承してくれた。この企画はyoutubeなどでよくみられる企画だが、土地勘のない我々が徒歩で回るとどのくらいの所要時間がかかるのかを書いていきたい。なお、駅の1つの改札機にタッチすることを、その駅を来訪したとみなすことにした。本来は各駅間についてどの道を通ったかなどを詳細に書きたいが、時間と分量の都合上、下のような表を作成する。
(1)渋谷~上野(2018年11月某日)
駅間 徒歩 山手線 迷い度 複雑度 疲労度 印象に残った物や景色
①渋谷―恵比寿 28分 1.6 5 5 5 特になし
②恵比寿―目黒 24分 1.5 2 3 3 エビスビール記念館
③目黒―五反田 17分 1.2 2 2 2 住宅街
④五反田―大崎 13分 0.9 2 2 1 目黒川
⑤大崎―品川 25分 2.0 4 5 4 大崎図書館
⑥品川―田町 30分 2.2 1 1 5 東京タワー
⑦田町―浜松町 23分 1.5 1 1 3 特になし
⑧浜松町―新橋 18分 1.2 1 1 3 特になし
⑨新橋―有楽町 13分 1.1 1 1 2 特になし
⑩有楽町―東京 09分 0.8 1 2 1 東京国際フォーラム
⑪東京―神田 19分 1.3 3 3 4 飲み屋街
⑫神田―秋葉原 15分 0.7 3 3 3 神田川
⑬秋葉原―御徒町 14分 1.0 2 4 3 ひたすら高架沿い
⑭御徒町―上野 11分 0.6 1 1 2 アメ横商店街
※表の見方
各駅間の徒歩での所要時間、山手線内回りでの営業キロ(所要時間はどれも1~3分である)、どのくらい迷ったか(迷い度)、どのくらい複雑であったか(複雑度)、どのくらい疲れたか(疲労度)、その駅間で印象に残った景色やモノを書いてある。迷い度、複雑度、疲労度については1-5の数値で表す。また、徒歩での所要時間、複雑度、疲労度は我々の通った経路におけるものであり、常に最短ルートであるとは限らない。疲労度では、それまでに蓄積された疲労は考慮されず、あくまでもその駅間でどれだけの疲労を感じたかである。各項には様々な因果関係が考えられ、例えば複雑度が低くても、経路があまりに単調すぎるがために疲労度が高くなるということもあれば、複雑度が高く疲労度が高くなるということもある。顕著なところは<感想>で述べる。
<感想>
ご覧の通り、徒歩での所要時間と山手線の営業キロとの関係は若干あるようにも見えるし、ないようにも見える。①渋谷―恵比寿は明らかに土地勘のなさが出た。線路沿いを通ればよいだけなのに、少しでも線路が見えなくなると迷ってしまい、疲労度が上がった。駅を進むごとに徐々に慣れていった。⑤大崎―品川は山手線自体がカーブしているため、線路沿いを通ることができず、線路からかけ離れた経路であったため、不安であったのを覚えている。品川―新橋はずっと道一本であったため、迷わなかったが単調であった。特に、間に高輪ゲートウェイが開業予定である⑥品川―田町は単調なうえに30分歩き、疲労度がMAXであった。最初は慣れずに道に迷う部分も多かったが、後半になるにつれ迷うことはなくなった。
(2)上野~渋谷(2019年3月某日)
駅間 徒歩 山手線 迷い度 複雑度 疲労度 印象に残った物や景色
⑮上野―鶯谷 11分 1.1 1 1 1 寛永寺輪王殿
⑯鶯谷―日暮里 17分 1.1 2 2 1 特になし
⑰日暮里―西日暮里08分 0.5 1 1 1 芋坂跨線橋
⑱西日暮里―田端 12分 0.8 1 1 2 開成高校
⑲田端―駒込 19分 1.6 1 3 2 特になし
⑳駒込―巣鴨 10分 0.7 1 2 1 桜並木
㉑巣鴨―大塚 14分 1.1 1 1 1 桜並木
㉒大塚―池袋 29分 1.8 3 5 5 都電荒川線
㉓池袋―目白 26分 1.2 2 4 5 西武百貨店
㉔目白―馬場* 15分 0.9 1 1 2 学習院大学
㉕馬場―新大久保 19分 1.4 1 1 1 特になし
㉖新大久保―新宿 27分 1.3 3 3 5 コリアンタウン
㉗新宿―代々木 12分 0.7 1 1 1 小田急踏切
㉘代々木―原宿 26分 1.5 4 2 4 明治神宮
㉙原宿―渋谷 30分 1.2 2 1 5 代々木体育館
*馬場=高田馬場
<感想>
御覧の通り、最初はとても順調であった。線路がカーブしている⑲田端―駒込も難なくこなすことができた。最初の難関は㉒大塚―池袋。ここも線路がカーブしているうえ、地図上で調べたところ遠回りを余儀なくされた。池袋では駅ビルに入ってから改札口までの道のりが長く疲労度が増した。新宿では一度駅ビルに入ると迷って出てくることができなくなるといけないため普段我々が利用する南口まで歩いた。そのため、新宿駅自体はすぐ横に見えているにもかかわらず、最も代々木寄りの南口まで人ごみの中を歩いたため、疲労度が増した。池袋、新宿といった巨大な駅周辺は人が多いうえに駅に着いてもなかなか改札機までたどり着くことができないので、皆様でこの企画をやられる際にはぜひご注意を。㉘代々木―原宿は、明治神宮の通り抜けを図り、門前まで行くも閉門となり、引き返したため疲労度が増した。㉙原宿―渋谷も渋谷駅に近づくにつれ、人の数が多くなり疲労度が増した。全体的に、最初は楽勝かと思うほど順調であったものの、池袋駅以降ターミナル駅周辺を中心に、幾多の困難が待ち構えていた。ゴールの渋谷に着いた時、友人と祝杯を挙げる気力もなかった。
4. 駅の話
駅の話をしたい。こちらは、一般的なデータを連ねることを基本とし、個人的な感想や考察が加わる場合もある。東京と言えば、複雑な鉄道網。なので、各駅で乗り換えできる路線を中心に書く。乗換可能路線のうち、JRは書き上げるときりがない路線があるため、私の独断と偏見で主な路線のみ書く。また、相互乗り入れが複雑なため、その駅で乗り入れしている際は、―(棒線)で結んでおく。人数は2017年度のJRの乗車客のみである。駅構造は在来線のみである。
[1]渋谷(2面2線―山手線 1面2線―埼京線、湘南新宿ライン 高架駅 370,669人)
埼京線、湘南新宿ライン、京王井の頭線、東急田園都市線―東京メトロ半蔵門線、東急東横線―東京メトロ副都心線、東京メトロ銀座線
言わずと知れた若者の街、渋谷。主に1,2年の東大生は渋谷から京王井の頭線で2駅の駒場キャンパスに通うためよく渋谷で遊ぶ。0時半を過ぎても混雑しているのを見て驚愕した思い出がある。
渋谷駅(2019.3.31)
[2]恵比寿(2面4線 高架駅 145,319人)
埼京線、湘南新宿ライン
渋谷から湘南新宿ラインに乗車したい場合、山手線ホームからはかなりの距離を有するので、恵比寿まで1駅乗って乗り換えることをお勧めする。
恵比寿駅(2019.10.13)
[3]目黒(1面2線 地上駅 111,655人)
東急目黒線―東京メトロ南北線―都営地下鉄三田線
目黒駅なのに品川区にある。
目黒駅(2018.10.13)
[4]五反田(1面2線 高架駅 139,030人)
東急池上線、都営地下鉄浅草線
池上線は都会を走る鉄道とは思えないほどコンパクトに思える。
五反田駅(2018.10.13)
[5]大崎(4面8線 地上駅 164,876人)
埼京線―東京臨海高速鉄道りんかい線、湘南新宿ライン
高校時代、ビッグサイトで行われるイベントに参加していた際、この大崎を拠点としていたことがあった。りんかい線で1本とはいえ、高額運賃を何とかしてほしいものだ。
大崎駅(2018.10.13)
[6]品川(8面15線 地上駅 378,566人)
京浜東北線、東海道線、横須賀線、東海道・山陽新幹線、京急本線
いわゆる都心の玄関である。品川駅なのに港区にある。
品川駅(2018.10.13)
[7]田町(2面4線 地上駅 154,915人)
京浜東北線、都営地下鉄三田線(三田)、都営地下鉄浅草線(三田)
慶應大学がやはり1番有名であろう。
田町駅(2018.10.13)
[8]浜松町(2面4線 地上駅 158,368人)
京浜東北線、東京モノレール、都営地下鉄浅草線(大門)、都営地下鉄大江戸線(大門)
東京モノレールを使えば当駅から羽田空港まで素早く行くことができる。
浜松町駅(2018.10.13)
[9]新橋(3面6線―高架駅 1面2線―地下駅 277,404人)
京浜東北線、東海道線、横須賀線、東京メトロ銀座線、都営浅草線、ゆりかもめ東京臨海新交通
やはりオフィス街(サラリーマンの街)として有名である。
新橋駅(2018.10.13)
[10]有楽町(2面4線 高架駅 169,943人)
京浜東北線、東京メトロ有楽町線
京葉線東京駅への乗り換え当駅からのほうが便利である。駅員に申し出れば、正規の乗り換えとみなしてくれるらしい。
有楽町駅(2018.10.13)
[11]東京(5面10線―高架駅 2面4線―総武線地下駅 2面4線―京葉線地下 452,549人)
京浜東北線、東海道線、中央線快速、総武線快速、横須賀線、東北本線、常磐線、京
葉線、東海道・山陽新幹線、東北・山形・秋田・上越・北陸・上越新幹線、東京メトロ丸ノ内線
敢えて下手なコメントをしないでおく。
東京駅(2018.10.13)
[12]神田(3面6線 高架駅 103,940人)
京浜東北線、中央線快速、東京メトロ銀座線
昔の鉄道博物館の最寄り駅であった。
神田駅(2018.10.13)
[13]秋葉原(高架駅 2面4線+2面2線 250,251人)
京浜東北線、総武線各駅停車、つくばエクスプレス、東京メトロ日比谷線
オタクの街への最寄り駅。山手線、京浜東北線と総武線各駅停車とが交差している。
秋葉原駅(2018.10.13)
[14]御徒町(高架駅 2面4線 68,750人)
京浜東北線、東京メトロ銀座線(上野広小路駅)、東京メトロ日比谷線(仲御徒町駅)、都営地下鉄大江戸線(上野御徒町駅)
御徒町駅(2018.10.13)
[15]上野(6面12線―高架駅 3面5線―地上駅 187,536人)
京浜東北線、東北本線、常磐線、東北・山形・秋田・上越・北陸上越新幹線、東京メトロ銀座線、東京メトロ日比谷線、京成本線(京成上野駅)
かつては北への玄関であったこの駅も上野東京ラインの開通によりそのようなイメージが薄れていっているかもしれない。私も北から来る、そして北へ行く寝台列車によく乗ったため、この駅には大変お世話になった。
上野駅(2018.10.13)
[16]鶯谷(2面4線 地上駅 25,375人)
京浜東北線
鶯谷駅(2019.3.31)
[17]日暮里(3面6線 地上駅 113,468人)
京浜東北線、常磐線、京成本線、日暮里・舎人ライナー
日暮里から京成のスカイライナーを使えば成田空港まで素早く行くことができる。
日暮里駅(2019.3.31)
[18]西日暮里(2面4線 高架駅 100,917人)
京浜東北線、東京メトロ千代田線、日暮里・舎人ライナー
現時点で、山手線の中で最も新しい駅である。
西日暮里駅(2019.3.31)
[19]田端(2面4線 地上駅 47,034人)
京浜東北線
タバタデバタバタ等というダジャレは関東で有名なのか?
田端駅(2019.3.31)
[20]駒込(1面2線 地上駅 48,964人)
東京メトロ南北線
駒込駅(2019.3.31)
[21]巣鴨(1面2線 地上駅 77,285人)
都営地下鉄三田線
若者の街とよく対比され、高年齢層の街といったイメージがある。
巣鴨駅(2019.3.31)
[22]大塚(1面2線 高架駅 57,330人)
都電荒川線
山手線唯一の都電との乗換駅。
大塚駅(2019.3.31)
[23]池袋(4面8線 地上駅 566,516人)
埼京線、湘南新宿ライン、西武池袋線、東武東上線、東京メトロ丸ノ内線、東京メトロ有楽町線、東京メトロ副都心線
西武鉄道の列車は西武鉄道ホーム、有楽町線ホーム、副都心線ホームに現れ、東武鉄道の列車は東武鉄道ホーム、有楽町線ホーム、副都心線ホームに現れる。このことが、首都圏鉄道相互乗り入れの複雑さを表しているといえるだろう。西武百貨店は東口に、東武百貨店は西口にあるのも面白い。
池袋駅(2019.3.31)
[24]目白(1面2線 地上駅 38,179人)
やはり学習院大学が有名であろう。
目黒駅(2019.3.31)
[25]高田馬場(1面2線 高架駅 211,161人)
西武新宿線、東京メトロ東西線
早稲田大学が有名であろうが、徒歩だと少し距離がある。西武新宿線の西武新宿駅が新宿から少し離れていることもあり、山手線と西武新宿線との乗換は当駅で行われることが多い。
高田馬場駅(2019.3.31)
[26]新大久保(1面2線 高架駅 48,220人)
コリアンタウンで有名である。
新大久保駅(2019.3.31)
[27]新宿(8面16線 地上駅 778,618人)
埼京線、湘南新宿ライン、中央線快速、中央線各駅停車、京王線、小田急小田急線、東京メトロ丸ノ内線、都営地下鉄新宿線、都営地下鉄大江戸線、西武新宿線
いわずと知れた新宿。乗降客数は世界1位であるらしい。
新宿駅(2019.3.31)
[28]代々木(3面4線 高架駅 69,935人)
総武線各駅停車、都営地下鉄大江戸線
総武線各駅停車から山手線内回りに乗り換える際に利用する駅。
代々木駅(2019.3.31)
[29]原宿(1面2線 地上駅 74,353人)
東京メトロ千代田線(明治神宮前駅)、東京メトロ副都心線(明治神宮前駅)
若者の街。今は使われていない皇室専用ホームがある。
原宿駅(2019.3.31)
写真はすべて筆者撮影
5. 参考文献
・『JR時刻表 2018年3月号』(交通新聞社)
・「JR東日本ホームページ―各駅の乗車人員」
https://www.jreast.co.jp/passenger/index.html(2019年4月7日閲覧)
・JR東日本ホームページ―駅情報
https://www.jreast.co.jp/estation/sp/(2019年4月7日閲覧)