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都営大江戸線

平成30年度入学 長サギ

 

1. はじめに

 円環をめぐる鉄道と聞けば、山手線や大阪環状線といった環状運転をしている路線を思い浮かべる人は多いだろう。しかし、完全なる環状運転を行ってはいないもののそれに近い環をもつ路線が、東京の地下には通っている。それが今回扱う都営地下鉄大江戸線である。この記事では、大江戸線の概要と運行形態について考察しようと思う。

 

2. 概要

1)基礎データ

 大江戸線は、東京都新宿区の都庁前駅と東京都練馬区の光が丘駅を6の字型に結ぶ、全長40.7kmの地下鉄路線である。この路線は、車輪でレールの上を走りつつも、動力はリニアモーターを使用する、鉄輪式リニアモーターカーを採用している。これにより、床下機器の小型化、延いては車両の小型化、トンネルの断面積の縮小を実現し、建設費を抑えることができた。ちなみにこの鉄輪式リニアモーターカーは、横浜市営地下鉄グリーンラインや福岡市営地下鉄七隈線をはじめ、複数の路線で採用されている。

 

2)路線図

 先述した通り、大江戸線は都庁前-光が丘の間を6の字型で結んでいる。具体的には、都庁前駅を起点として、飯田橋、両国、汐留、六本木というように都心を一周し、再び都庁前駅を通った後は、練馬、光が丘へと向かうようなルートである。

図1. 都営大江戸線停車駅(東京都交通局ホームページより引用)

 

3. 車両

 先述の通り、大江戸線の車両はいずれも小型で、全長16.5m、全幅、全高もそれぞれ2.5m3mほどである。ここではそれらを簡単に紹介していこうと思う。

112-000形(12次車)

  1991年の光が丘-練馬区間の開業当初から運行されていた車両。車体はアルミ合金製で、アイボリーに塗装されていた。当初は6両編成だったが、新宿延伸に伴い8両化された。老朽化により、後述の12-600形に代わる形で引退した。

12-000形(H3.12~H28.6)

図2. 都営地下鉄12-000形(12次車) (東京都交通局ホームページより引用)

 

212-000形(34次車)

 1997年の新宿延伸に伴い、増備が進められた車両。12次車からは、前面の形状変更、無塗装化などの変更が加えられた。今尚現役の車両である。

12-000形(H10.3~)

3. 都営地下鉄12-000形(34次車) (東京都交通局ホームページより引用)

 

312-600

 輸送力増強のために2012年に導入が始まった車両。12-000形をベースに、バリアフリー化などが施された。

12-600形(H24.2~)

4. 都営地下鉄12-600形(東京都交通局ホームページより引用)

 

4. 運行形態

1)都庁前駅

 運行形態を見る前に、まずは都庁前駅の配線について説明する。図4のように、この駅は22線の構造で、内側2線は飯田橋方面に行き来する列車が、外側2線は光が丘、六本木方面に行き来する列車が使用している。内側2線の光が丘寄りには引き上げ線があり、また渡り線も設置されている。このため、構造上は光が丘方面から来た列車は六本木方面にも飯田橋方面にも行け、またその逆も可能となっている。

5. 都庁前駅の配線図(著者作成)

 

2)実際の運行形態

 次に、実際の運行形態を説明しようと思う。結論から言ってしまうと、光が丘方面から来た列車で飯田橋方面へ直通する列車は存在しない。すなわち、光が丘方面から来た列車は(終電の都庁前止まりの列車を除いて)すべて六本木方面へと向かう。またその逆も然りで、飯田橋方面から来た列車は光が丘方面へは直通せず、引き上げ線で折り返し、再び飯田橋方面へと向かっていく。

 このような6の字型の運行形態になっている理由はいくつか考えられる。まず、飯田橋方面への直通列車を作ると、編成の向きが反対になってしまうことだろう。また、駅ナンバリングの順番通りに走らなくなることもあり、案内が複雑になることなどが考えられる。次に、なぜ光が丘方面と六本木方面を直通させる運行形態をデフォルトにしたのかを考えてみる。これは、大江戸線は都心環状線としての役割よりもむしろ、光が丘や練馬と都心部を結ぶ役割を重視しているからではないかとも考えられる。図6を見ると、飯田橋方面の駅よりも青山一丁目、六本木、大門といった駅の方が乗降客数が多いこともわかり、やはり大江戸線は光が丘、練馬と、都心部の乗降客数の多い駅とのアクセスを考えているとも思われる。

6. 大江戸線各駅の一日平均乗降客数(東京都交通局ホームページより引用)

 しかし、この話はこれだけでは終わらない。大江戸線が練馬地区と都心を結ぶのがメインの路線だと考えると、都庁前の駅構造的にも興味深いことが見えてくる。例えば、大江戸線で六本木方面と飯田橋方面を行き来するために、都庁前駅で乗り換えようとすると、ホームが違うため階段を昇降しなければならず、不便である。しかし、光が丘方面から飯田橋方面に行こうとすれば、同一ホーム上で乗り換えることができ、さらには先述の通り六本木方面へは乗り換えなしでいける。これらの逆もまた然りである。つまり、都庁前駅は、もちろん配線上の都合もあるとは思うが、環状線としての利用よりもむしろ光が丘方面と都心の連絡線としての利用の方が便利になるような構造になっているということである。以上のように、大江戸線の6の字型運行には、光が丘方面と都心の連絡という意味が込められているのではないか。

 

5.おわりに

 本記事では、大江戸線の6の字型運行について、主に乗客の流れの観点から考察を行ったが、他の観点からも十分考察できる興味深い運行形態であると思う。さらには、大江戸線の鉄輪式リニアとしての特殊性や汐留連絡線、E5000形機関車や延伸計画など、大江戸線に関する話題は豊富にあり、非常に魅力的な路線であると言えるだろう。

 

6. 参考資料

PHP研究所『都営地下鉄・都電・都バスのひみつ』(PHP研究所・2014年)

「東京都交通局ホームページ」

https://www.kotsu.metro.tokyo.jp 201949日閲覧)


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