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ケーブルカー

平成28年度入学 中シン

 

1.   はじめに

ケーブルカーといえば、何を思い浮かべるだろうか?多くの人は観光地を思い浮かべるだろう。実際、ケーブルカーの多くは登山や寺社参拝のために建設されている。それゆえ日常生活とは縁遠い存在であり、その仕組み等を詳しく知らない方も多い。今回はケーブルカーを身近に感じていただけるように、その仕組みや、国内の特徴的なケーブルカーについて説明したい。

 

2.   ケーブルカーとは

ケーブルカーは鋼索鉄道とも呼ばれ、急勾配を登坂するために鋼索(ワイヤーロープ)に車両を緊結し、山上の巻上機を動力として車両を上下させる鉄道である。

勾配の限度は、一般の鉄道で80‰程度、ラックレール式の鉄道(歯車をかみ合わせながら登坂する鉄道)で250‰程度とされている一方で、ケーブルカーは700‰程度まで可能とされており、急勾配に強いのが特徴だ。

 

3.   ブルカ仕組

ケーブルカーには釣瓶式と循環式が存在するが、ここでは旅客用に多く用いられている釣瓶式の仕組みについて解説する。

釣瓶とは、井戸水をくむために、縄や竿などの先につけておろす桶のことを指す。これをケーブルカーに当てはめると、車体が桶であり、ケーブルが縄、山上の巻上機が滑車にあたる。車体にはケーブルが取り付けられており、山上の巻上機とつながっている。ほとんどのケーブルカーは2台が1組になっていて、両者は巻上機の滑車を経て1本のレールでつながっている。一方の車両が山上側終点にいるとき、もう一方の車両は山麓側終点にいるようになっている。2つの車両がほぼ等しい質量であれば両者はつり合っており、車両が上下移動しても全体の力学的エネルギーはほとんど変化せず、原理的には2台の質量差と摩擦に対応するエネルギーだけでシステム全体を運転することができるのだ。また、2つの車両はつねに中央でしかすれ違わないので、原則中央部だけが複線になっている。

 

4.   国内のケーブルカー

現在、日本国内には多数のケーブルカーが運行されているが、今回はそのうち、日本最古のケーブルカーである生駒鋼索線と、日本一勾配が急な高尾山ケーブルカーについて触れる。

 

(1)  生駒鋼索線

生駒鋼索線は、鳥居前と宝山寺を結ぶ0.9kmと、宝山寺と生駒山上を結ぶ1.1kmからなる近畿日本鉄道の路線である。

このうち、鳥居前−宝山寺間は大阪電気軌道(近鉄の前身)の系列会社である生駒鋼索鉄道によって1918年に開業しており、日本初のケーブルカーである。1926年には、輸送力増強のため、複線化が完成している。このうち、片方は戦時中に撤去されたが、1953年には復活した。そのため、中間のすれ違い地点では、4線が並んでおり、ケーブルカーとしては珍しい光景が広がっている。

一方、宝山寺−生駒山上間は別個の路線として、1929年に開業した。現在でも、運転系統は宝山寺駅で2分割され、乗り換えが必要である。

宝山寺1号線 コ11 12号車 「ミケ」(2017.08.26 鳥居前)近本紘太郎撮影

宝山寺1号線 コ11 11号車 「ブル」(2017.08.26 宝山寺)近本紘太郎撮影

山上線 コ15 15号車 「ドレミ」(2017.08.26 宝山寺)近本紘太郎撮影

 

2)高尾山ケーブルカー

高尾山ケーブルカーは、清滝と高尾山を結ぶ1kmの路線で、高低差は271mある。1927年に営業が開始され、戦時中に一時休止したが、1949年に復活している。1968年には、全自動制御の大型ケーブルカーを導入した。

なお、最急勾配が3118分であり、ケーブルカーの路線としては日本一の急勾配となっている。

高尾山ケーブルカー(2017.05.03 清滝)長ナノ撮影

 

5.   おわりに

ケーブルカーは日本各地で活躍している。今後ケーブルカーに乗車した際は、車窓の景色を楽しむだけでなく、その構造や運転システムにも注意してみると、様々な発見があり楽しいだろう。

 

6.   参考文献

半田利弘『物理で広がる鉄道の魅力』(丸善株式会社・2010年)

上浦正樹・須長誠・小野田滋『鉄道工学』(森北出版株式会社・2000年)

近畿日本鉄道 近鉄資料館 生駒鋼索線

http://www.kintetsu.jp/kouhou/Rireki/A40011.html (201857日閲覧)

高尾登山電鉄 ケーブルカーの構造と歴史

  http://www.takaotozan.co.jp/timeprice/cable.html (201857日閲覧)

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