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首都圏の通勤輸送

平成28年度入学 中シン

 

1.    はじめに

東京5方面作戦(通勤5方面作戦)から半世紀が経過し、JR東日本誕生から30年となる。東京5方面作戦で混雑率が低減したとはいえ、JR東日本が誕生した1987年の首都圏の朝ピーク時間帯の混雑率は平均238%となっていた。そして、この混雑率を低減することが首都圏の輸送改善の最も重要な課題であった。JR東日本では、列車の増発、列車の編成長の増強、新しい輸送ルートの新設などにより混雑緩和を図ってきた。ここでは、東京5方面作戦で対象となった主な路線(東海道線、総武快速・横須賀線、中央線快速、高崎線、宇都宮線、常磐線)について、ホームライナーや通勤快速を中心に路線ごとに触れていくことにする。ただし、通勤という性質上、原則として平日のダイヤについて扱うこととする。

 

2.    東海道線

JR東日本の管轄は東京駅〜熱海駅間である。民営化直前のダイヤ改正で東京―小田原間に「湘南ライナー」が設定され、上り2本・下り4本が185系で運転された。1988年には、新宿発着の「湘南新宿ライナー」上り・下り各2本が設定された。その後も増発を重ね、最大で「湘南ライナー」上り8本・下り9本、「湘南新宿ライナー」上り・下り各4本が設定された。「湘南新宿ライナー」については、湘南新宿ラインとまぎらわしいため、2002年に上り「おはようライナー新宿」、下り「ホームライナー小田原」に改称した。全駅にホームがないため普通列車を走行させられない貨物線も利用することで、できるだけ輸送量を増やそうとしている。また、藤沢駅や茅ヶ崎駅の貨物線上にライナー用のホームを設置して、利用者を取り込んできた。

また、東海道線には通勤快速が夜間下りに運行され、品川―大船間をノンストップで運転する。川崎駅や横浜駅など主要駅を通過することで、遠距離通勤者への着席サービスのレベル向上に貢献している。

普通列車のグリーン車には2階建て車両が使用されている。ただし、平日料金は50キロまで770円、51キロ以上980円と、ライナー料金510円と比較すると割高である。一方でライナーの運転本数は限られるものの、普通列車は多く運転されていることから、利便性は高いといえるだろう。

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(左)図1. 「ホームライナー小田原」等で使用される251(新子安駅 2015.02.15横コツ撮影

(右)図2. 「湘南ライナー」等で使用される185系(新子安駅 2015.03.15)横コツ撮影

 

3.    総武快速・横須賀線

総武快速線には、「ホームライナー千葉」が東京―千葉間4本、新宿―千葉間1本がそれぞれ千葉行きのみ運転されている。新宿発の列車は、新宿―御茶ノ水間は中央線快速の線路を走行し、御茶ノ水―錦糸町間は中央・総武緩行線に入り、錦糸町―千葉間は総武快速線を走行する。使用車両はすべてE257系である。民営化前から回送列車を営業列車化した「ホームライナー津田沼」が東京・新宿―津田沼間で運行されており、順次千葉駅まで延長されるなどして現状のように全列車千葉駅まで運行されるようになった。かつては「おはようライナー津田沼」が津田沼―東京間で1本運行されていた。

横須賀線には、1990年に「ホームライナー逗子」下り1本、「おはようライナー逗子」上り1本が設定されたが、2015年に廃止されている。

また、通勤快速が1994年より運行されており、現在上下各2本運行されている。朝ラッシュ時に成田空港発逗子行きと成田発大船行きが各1本運行され、夕ラッシュ時に東京発成田行きが2本運行される。総武快速線内には通過駅があるが、横須賀線内は各駅に停車する。横須賀線内では普通と案内されていることから、通勤快速は主に総武快速線利用者のために設定されていると言えるだろう。ただ、乗降客数の多い船橋駅にも停車することから、東海道線の通勤快速に比べると、近距離利用者と遠距離利用者のすみわけの性質が弱いと言えるだろう。

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(左)図3. E257系ホームライナー千葉(津田沼駅 2016.04.15

(右)図4. 通勤快速で使用されるE217系(津田沼駅 2016.8.24

 

4.    中央線快速

中央線快速には「中央ライナー」と「青梅ライナー」が運行されている。1991年に「おはようライナー高尾」「ホームライナー高尾」「おはようライナー青梅」「ホームライナー青梅」が運行を開始した。2001年に現在と同じ「中央ライナー」「青梅ライナー」へと変更された。使用車両は、かつては183系や185系であったが、現在は特急「スーパーあずさ」用E351系と、特急「あずさ」、特急「かいじ」用E257系となっている。「中央ライナー」は朝に上り2本、夜に下り5本が東京―八王子・高尾間に運行され、「青梅ライナー」は朝に上り1本、夜に下り3本が東京―青梅間に運行されている。

また、1993年から朝ラッシュ時に通勤特快が大月・高尾・青梅―東京間の上り列車5本運行されている。国分寺―新宿間がノンストップだが、過密ダイヤのため所要時間は昼間の中央特快・青梅特快と比較して大差ない。遠近分離には一役買っていると言えるだろう。

一方、1986年から夕ラッシュ時に通勤快速が東京―高尾・大月・河口湖・青梅間の下り列車20本運行されている。運転開始時は中野―三鷹間はノンストップで、三鷹以遠は各駅停車であったが、その後三鷹―立川間も国分寺のみ停車するように速達化された。1988年に荻窪、吉祥寺にも停車するようになった。中野―三鷹間の乗降客数は荻窪、吉祥寺が比較的多いため、夕ラッシュ時の上級種別である「中央ライナー」、「青梅ライナー」と、下位種別である快速との停車駅の差を適切に埋めていると言えるだろう。

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(左)図5. 「中央ライナー」で使用されるE351系(高円寺駅 2016.02.27)横コツ撮影

(右)図6. 「中央ライナー」「青梅ライナー」で使用されるE257系(新宿駅 2012.08.05

 

5.    高崎線

国鉄時代の1984年に特急列車の回送を有効活用して、夕ラッシュ時に上野―大宮間で「ホームライナー大宮」(運行開始時には名称はつけられていなかった。)の運行を開始した。1988年にその一部を高崎線の鴻巣駅まで延長運転し、「ホームライナー鴻巣」と名付けられた。1989年には新宿発の「ホームライナー鴻巣」も設定されたが、1993年に新特急「ホームタウン高崎」として運行区間を新宿ー高崎間に変更した。1997年に、「ホームライナー大宮」は廃止された。同じく、1997年には朝ラッシュ時に新宿駅に乗り入れる、新特急「さわやかあかぎ」の運行を開始した。2002年に「ホームタウン高崎」、「さわやかあかぎ」ともに、特急「あかぎ」に統一された。2014年に、平日通勤時間帯のみ「あかぎ」に代わって、特急「スワローあかぎ」の運行が開始された。これに伴い、「ホームライナー鴻巣」は全列車が廃止された。なお、「スワローあかぎ」は全席指定となっており、着席サービスの向上を図っている。2016年には新宿発の下り「スワローあかぎ」が廃止され、新宿着の上り「スワローあかぎ」のみが新宿駅、池袋駅まで運行されている。

また、通勤快速が夕ラッシュ時に運行されている。1988年に前身となる快速「タウン」が運行開始し、1990年に通勤快速に改称された。現在では上り4本、下り5本が運行されている。下り2本を除く全列車が大宮―熊谷間は鴻巣駅にだけ停車し、近距離利用者と遠距離利用者を分離する役割を果たしている。

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7. 「スワローあかぎ」で使用される651系(上野駅 2016.10.30

 

6.    宇都宮線

1988年に「ホームライナー大宮」のうち2本を古河駅まで延長した「ホームライナー古河」が上野―古河間で運行を開始した。1989年には新宿―古河間でも運行を開始した。しかし、2014年に全列車が廃止されている。一方で新宿―宇都宮・黒磯間に運行されていた新特急「なすの」が、1995年に新特急「おはようとちぎ」、新特急「ホームタウンとちぎ」に名称変更された。2002年には新特急から特急に称号が変更され、2010年に両方とも全列車が廃止された。

また、通勤快速が夕ラッシュ時に運行されている。1988年に前身となる快速「スイフト」が運行開始し、1990年に通勤快速に改称された。現在では上り6本、下り5本が運行されている。

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8. E231系通勤快速(宇都宮駅 2015.03.27

 

7.    常磐線

1989年に夕ラッシュ時に上野―土浦間下りで「ホームライナー土浦」が運行を開始した。1990年には朝ラッシュ時に土浦―上野間上りで「おはようライナー土浦」が運行を開始した。1998年には両列車とも特急「フレッシュひたち」に格上げされた。現在ではラッシュ時の特急「ひたち」、特急「ときわ」が日中よりも停車駅を多めに設定することで、通勤需要に対応している。

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9. 「ひたち」「ときわ」で使用されるE657系(馬橋駅 2015.06.07)横コツ撮影

 

8.    おわりに

首都圏への人口集中は著しく、朝夕のラッシュ時の混雑は激しいものとなっている。その中で、いかに快適に通勤するかという問題は重要であり、ライナーや通勤快速、グリーン車が重宝されるのだろう。首都圏の大学に通う者として、今後も注目のテーマである。

 

9.    参考文献

『鉄道ピクトリアル 20046月号』(鉄道図書刊行会)

『鉄道ジャーナル 20001月号』(鉄道ジャーナル社)

『鉄道ジャーナル 20172月号』(鉄道ジャーナル社)

『東京時刻表 20173月号』(交通新聞社)

 

*写真は特記以外全て筆者が撮影した。


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