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銀の馬車道と播但線

平成30年度入学 近ヒメ

 

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1. 播但線沿線地図

銀の馬車道ロード ウォーキングサイクルングMAPhttps://www.gin-basha.jp/wp/wp-content/uploads/2016/10/c3deac41d260873f4a546fd496ba01d8.pdf)、播但貫く73kmの轍 日本遺産「播但貫く、銀の馬車道 鉱石の道」 〜資源大国日本の記憶をたどる73kmの轍〜(http://wadachi73.jp/story/)をもとに筆者作成)

注:厳密には、神河町、市川町、福崎町は神崎郡である。

 

突然だが、この地図の中で馴染みのある地名がどのくらいあるだろうか。岡山、神戸あたりは多くの方がご存知だと思われる。姫路城などから連想して姫路の位置がわかる方も多いだろう。しかし、姫路の北には関東では馴染みのなさそうな地名が並んでいる(ちなみに神崎郡神河町には映画「ノルウェイの森」のロケ地であった砥峰高原がある。)。3本の線には意味がありそうだが、何を示しているのかと思われる方も多かろう。

 

この地図について説明する。まず、姫路市は兵庫県南西部に位置している。瀬戸内海(この付近について、特に播磨灘と呼ぶことがある)に面していて、本当はここに家島諸島があるのだが、説明の都合上省略している。山陽新幹線、JR山陽本線、JR播但線、JR姫新線の駅であるJR姫路駅は兵庫県における鉄道交通の要衝の一つである。播但線は後で詳しく説明するが姫路―和田山を結ぶ路線である。市川は朝来市に源流のある二級河川である。飾磨(しかま)というのは姫路市南部の地域のことである。

北に目を向けると生野銀山がある。飾磨と生野銀山を結んでいた道が銀の馬車道と呼ばれるものである。

これで三本の線についてざっくり理解していただけたと思う。

 

前説が長くなってしまったが、ここからは銀の馬車道、播但線とこの道の関係、播但線の今について見ていくことにする。

 

1. 銀の馬車道

1)概要

銀の馬車道は、正式には『生野鉱山寮馬車道』という。生野銀山と飾磨港を結び、日本で最初の高速産業道路といわれている。全長は49kmである。

 

2)生野銀山の歴史(近代化まで)

そもそも生野で銀が発見されたのは807年のことである。本格的に採鉱が始まったのは1542年で(より正確には、生野銀山に関する記録が1542年までの約700年間見つかっておらず、採鉱開始は1542年であるというのが通説となっている。)、但馬守護職の山名祐豊によって行われた。また、この頃大陸から錬金技術が伝わり、銀の産量が増加していった。

時代は戦国時代、大名などが資金調達の目的でこの銀山を狙っていた。まずここを押さえたのは織田信長である。信長はここに代官を置いた。信長の死後、秀吉もここに代官を置いた。徳川家康は天下統一の後、佐渡や石見と同様に直轄領として支配し、ここに奉行を置いた。このように歴史上有名な人物が登場することからもこの地の重要さがうかがえる。

しかし江戸末期には、“たがね”などで掘削する従来の方法では採掘量に限界があったことなどもあり、閉山に近い状態となってしまう。

時代は少しだけ進んで、1868年に明治新政府は貨幣制度の改革にあたり材料を確保する目的で生野銀山を幕府から接収した。その後、西洋から鉱山技師をはじめ、多くの技術者を雇った。鉱石の分析や人材育成、器械や発破による掘削の効率化(発破による掘削を実作業で行ったのは生野銀山が初めてといわれている。)など、近代化を進めた。1876年には掘削に必要な器械も完成し、近代化が完了する。

 

3)銀の馬車道の歴史

さて、生野銀山の近代化が完了し、本格的に運用される前に整備しておかなければならないものが輸送手段(道など)である。生野からは採掘した鉱石を、生野へは採掘に必要なものや日用品などを輸送せねばならないからである。

ここで、銀の馬車道のもう一つの端点、飾磨港(飾磨津)について説明する。室町時代以来、大量輸送手段の一つとして船があった。羽柴秀吉やその軍師、黒田官兵衛は飾磨を播磨地方(大まかには兵庫県南西部)の輸送拠点とし、江戸時代には北前船も寄港するほどであった。

生野と物資のやり取りをする先はこの飾磨港であったが、この区間では、もともと人の行き来が多いわけではない。街道はあったものの、細く、整備されていない道しかなかった。

輸送方法については幾つか案があり、鉄道を利用するものや付近を流れる市川を利用するものもあったが、コストや実用性の面で難点があった。

そんな中、実現に向けて動き出したのが道路と馬車による輸送である。この道路が画期的で、日本初の舗装された道路(舗装といっても、現代のようにアスファルトで舗装するわけではなく、マカダム式舗装という方法がとられた。)だといわれている。幅も約510mと両側から通行できる。図1の地図を見ていただければ播但線や市川に比べれば比較的まっすぐな道に見えるが、実際その通りで急なカーブや坂道が少なく、馬車による輸送にも耐えられる頑丈な道路であった。

この全長49kmの道路が完成したのは1876年で工期は約3年であった。銀の馬車道の誕生である。

1894年に播但鉄道として姫路―寺前が開業し、物資などの輸送を担ってきた銀の馬車道の役割は鉄道が担うようになっていく。そして1920年、銀の馬車道は廃止された。

現在、銀の馬車道はアスファルトによる舗装や経路の変更を経て、国道や県道の一部になるなどして残っている。

 

4)生野銀山の歴史(近代化後)

近代化以降、採掘が行われ、明治、大正、昭和の3時代で銀およそ773tを産出したが、1973年鉱石を採掘する目的では閉山となる。1974年には史跡としての生野銀山がオープンし、現在では兵庫県の観光地の1つとなっている。

最近は生野銀山のPRのために“GINZAN BOYS”(銀山ボーイズ)なるユニットも登場している。

 

2. 播但線

1)概要

区間:姫路―和田山

距離(営業キロ):65.7km

姫路―寺前は電化されているので電車が走る。寺前―和田山は気動車が走る。単線。

 

2)沿革

1887年、飾磨港と生野を結ぶ「飾磨馬車鉄道」の出願が行われ、認可された。その後社名変更により「播但鉄道」となった。1894年に姫路―寺前が開業。後に延伸し飾磨(後の飾磨港)―新井での運行となるが1903年に播但鉄道は解散し、山陽鉄道に買収された。1906年には新井―和田山も開業するが、同年に国有化される。1908年に播但線の一部として和田山―八鹿が開業したが1912年に同区間が山陰本線に編入したことにより、播但線は飾磨―和田山となる。1986年に飾磨港―姫路が廃止された。1998年、姫路―寺前が電化される。

 

3)駅

駅は全部で18駅である。馴染みがなく読みにくいものもあると思われるので、駅名にはふりがなを施した。

2. 播但線の各駅

 

ここで沿線についていくつか興味深い話題があるので紹介する。

[1]福崎町と柳田國男

播但線沿線には有名人が多いような気がする。仁豊野は和辻哲郎生誕の地であるし、黒澤明とともに活躍した脚本家の橋本忍の生家は鶴居駅の近くにある。柳田國男も播但線沿線にゆかりのある人物である(福崎出身)。銀の馬車道の中継地、福崎町には姫路藩の大庄屋である三木家があるのだが、柳田國男は少年時代にここで学んだといわれている。

[2]生野駅のこと

生野駅、長谷駅付近は播但線における難関の一つである。生野駅から和田山方面に向かう場合、カーブを経てトンネルに入っていくことや勾配があったことから、蒸気機関車時代には車両の左側通行が難しかった。そのため全国的にも珍しい右側通行の方式がとられ、それは現在まで続いている。

[3]竹田城

竹田城は気候の条件が良ければ発生する霧によって浮かんでいるように見えることから「天空の城」とも呼ばれる。竹田城は竹田駅からも行くことができる。

ちなみに、202010月9日公開の映画「望み」のために、竹田城跡で伐採されたアカマツを使ってヴァイオリン(「天空のヴァイオリン」と呼ばれる)が製作された。劇中でこれが演奏されるそうだ。

 

4)車両

主に運用されるのは103系、キハ41系、キハ189系(特急はまかぜとして運用)である。稀に221系などが運用に入る。

以前は銀の馬車道をPRするためのラッピング列車も走っていた。

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103系(姫路駅 2013.06.16

列車, トラック, 屋外, 空 が含まれている画像

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103系 銀の馬車道ラッピング電車(赤)(姫路駅 2013.06.16

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103系 銀の馬車道ラッピング電車(青)(姫路駅 2014.06.15

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103系 銀の馬車道ラッピング電車(黄)(姫路駅 2014.09.21

空, 輸送, 列車, 屋外 が含まれている画像

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キハ189系 (三ノ宮駅 2013.3.11

 

5)運行形態(2020921日現在、一部202036日現在)

姫路―寺前は電化だが、寺前―和田山は非電化であるため、走っている車両も異なる。すなわち、姫路―寺前では電車、寺前―和田山では気動車である。そのため、原則寺前駅での乗り換えが必須になる。例外は特急「はまかぜ」と期間限定の特急「かにカニはまかぜ」であるがこれについては後ほど説明する。

姫路―寺前について、多数が姫路―寺前を往復しているが、一部は姫路―福崎の往復である。姫路駅から寺前方面へ向かう列車の本数(特急含む)は、基本的に1時間に2本程度、朝夕ラッシュ時には多い時で1時間に5本運行される。種別は特急と普通(各駅に停車するもの)がある。

一方、寺前―和田山ではこの区間を往復する列車がほとんどである。寺前駅から和田山方面に向かう列車の本数をみると、1時間に02本。種別は特急、快速(長谷駅のみ通過)、普通である。

(ここまでは2020921日現在である。以下は202036日現在のもの)

はまかぜ、かにカニはまかぜは大阪―浜坂・香住・鳥取を結ぶ特急で、播但線内の停車駅は姫路、福崎、寺前、(生野)、(竹田)、和田山である(カッコ内の駅は停車しないものもある)。

 

 

 

ここまで、銀の馬車道や播但線について紹介してきた。関東ではあまり馴染みのない路線であったと思われるが、興味を持っていただければ幸いである。

 

3. 参考文献

平岡忠『兵庫の鉄道全駅 JR・三セク』(神戸新聞総合出版センター)

「銀の馬車道ロード ウォーキングサイクルングMAP

    https://www.gin-basha.jp/wp/wp-content/uploads/2016/10/c3deac41d260873f4a546fd496ba01d8.pdf 202039日閲覧)

「砥峰高原 構成文化財/スポット 日本遺産「播但貫く、銀の馬車道 鉱石の道」 〜資源大国日本の記憶をたどる73kmの轍〜」

http://wadachi73.jp/spot/79 202038日閲覧)

「銀の馬車道とは 銀の馬車道 時空を超えて辿る歴史探訪浪漫譚_。」

https://www.gin-basha.jp/about/history/20203月9日閲覧)

「播但貫く73kmの轍 日本遺産「播但貫く、銀の馬車道 鉱石の道」 〜資源大国日本の記憶をたどる73kmの轍〜」

    http://wadachi73.jp/story/ 202036日閲覧)

「生野銀山 【沿革】」

    http://www.ikuno-ginzan.co.jp/about/about02.html 202036日閲覧)

「生野銀山 【銀産量】」

    http://www.ikuno-ginzan.co.jp/about/about03.html 202036日閲覧)

「生野銀山 【お土産・お食事】」

    http://www.ikuno-ginzan.co.jp/omiyage/omiyage02.html 202037日閲覧)

「生野銀山の歴史 朝来市」

    https://www.city.asago.hyogo.jp/0000000351.html 202037日閲覧)

「ニュースひめれん JR山陽本線等姫路駅付近連続立体交差事業の情報誌 vol.9

https://web.pref.hyogo.lg.jp/chk10/documents/000120252.pdf 202036日閲覧)

「超スーパー地下アイドル「GINZAN BOYS」公式サイト」

    http://www.ikuno-ginzan.co.jp/ginzan-boyz/ 202037日閲覧)

「沿線点描:JR西日本」

https://www.westjr.co.jp/company/info/issue/bsignal/13_vol_149/area/index.html 202037日閲覧)

「概要案内 朝来市」

http://www.city.asago.hyogo.jp/takeda/0000001275.html 202037日閲覧)

「アクセスガイド 朝来市」

    http://www.city.asago.hyogo.jp/takeda/0000003314.html 202037日閲覧)

「姫路駅 時刻表:JRおでかけネット」

    https://www.jr-odekake.net/eki/timetable.php?id=0610619 202036日閲覧)

「寺前駅 時刻表:JRおでかけネット」

https://www.jr-odekake.net/eki/timetable.php?id=0630207 202036日閲覧)

「姫路駅 時刻表:JRおでかけネット」

    https://www.jr-odekake.net/eki/timetable?id=0610619 2020921日閲覧)

「寺前駅 時刻表:JRおでかけネット」

    https://www.jr-odekake.net/eki/timetable?id=0630207 2020921日閲覧)

「映画「望み」に「天空のヴァイオリン」が使用されました。 ニュース・イベント 日本遺産「播但貫く、銀の馬車道 鉱石の道」 〜資源大国日本の記憶をたどる73kmの轍〜」

    http://wadachi73.jp/news/91 2020921日閲覧)

 

図は全て筆者が作成した。また、写真は全て筆者が撮影した。


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