線路が越える
平成31年度入学 水アル
1. はじめに
立体交差しているなどの複数の路線が乗り入れている駅や、途中の立体交差では、必然的に一方の線路がもう一方の上を通過する、即ち、越えるということが生じる。また、広義的に言えば、線路が越えるのは必ずしも可視的なものとは限らず、いつの間にか越えているということもある。そこで、今回は、様々なパターンに分類し、それぞれについて例を取り上げながら述べていきたい。尚、今回は関東地方の事例を中心に取り上げるため、全てを取り上げられない可能性がある。
2. パターンごとに
以下では、パターン毎に幾つかの例を挙げる。勿論、どのパターンに該当するかが曖昧である場合もある。
(1) 駅で
最も典型的なパターンと思われる。多くは、駅のプラットホーム部分で十字型に交差し、その駅でもう一方に乗り換えができる。
[1]東急溝の口駅・JR武蔵溝ノ口駅
川崎市高津区にある。東急田園都市線東急大井町線、JR南武線が乗り入れている。川崎市有数の繁華街の駅であることもあり、乗降人員は2018年度、東急溝の口駅の田園都市線で156,837人、大井町線で57,396人、JR武蔵溝ノ口駅の乗車人員は86,346人である。JR南武線は地上を走り、その上を東急田園都市線が高架で通っている。
図 1. 溝の口駅 (2019.10.12)筆者撮影
[2]JR秋葉原駅
東京都千代田区にある。JR京浜東北線と、JR山手線、JR中央線・総武線各駅停車が乗り入れている。2階部分を山手線及び京浜東北線が通り、その上を中央線・総武線各駅停車が越える形になっている。乗車人員は2018年度で252,267人である。
[3]JR渋谷駅・東京メトロ渋谷駅
このパターンでは、JR山手線と東京メトロ銀座線が該当する。JR山手線が下を走り、東京メトロ銀座線が上を通る。だが、このパターンに該当するのは今年までである。今年末から来年初めにかけて東京メトロ銀座線の駅が東側に移設される為である。
図 2. JR渋谷駅2番線 (2019.05.24)筆者撮影
[4]JR武蔵小杉駅・東急武蔵小杉駅
このパターンでは、東急東横線とJR南武線が該当する。(JR横須賀線はホームがかなり離れている為該当しない)南武線が地上を走り、その上を東横線が通る。周辺は近年発達した高級住宅街であり、東急東横線の乗降客数は176,351人である。
[5]JR南浦和駅
埼玉県さいたま市浦和区にある。JRの駅であり、京浜東北線と武蔵野線が乗り入れている。乗車人員は60,389人である。京浜東北線など南北に走る線路が地上を通り、武蔵野線が上を通る。京浜東北線の運用の一部には当駅行きのものや当駅始発のものがある。
図 3. JR南浦和駅 (2019.09.23)筆者撮影
(2) 駅の前後で
駅に入る前、若しくは駅を出発した直後に何らかの線路を越えるパターンである。これは、複数の路線が乗り入れる駅で、且つ、それらの駅が平行である場合に多い。
[1]JR長津田駅・東急長津田駅
神奈川県横浜市緑区にある。JR横浜線と東急田園都市線、東急こどもの国線が乗り入れている。長津田駅の西側で、田園都市線の線路がJRの線路を越えている。JRの乗車人員は61,167人で、東急の乗降人員は田園都市線で129,064人、こどもの国線で12,604人である。
図 4. 長津田駅(2019.08.10)筆者撮影
[2]東急二子玉川駅
東京都世田谷区にある。東急田園都市線と東急大井町線が乗り入れている。当駅の北側が立体交差となっている。乗降人員は、田園都市線で103,789人、大井町線で61,632人である。現在までに、田園都市線の複々線化に伴う駅の改良工事が行われ、その名残が残っているとされる。
[3]JR新宿駅
東京都新宿区にある(一部は東京都渋谷区)。JRだけで見ると、山手線、中央線・総武線各駅停車、中央線快速、埼京線、湘南新宿ラインが乗り入れている。当駅の北側で、中央線の線路が山手線の線路を越えている。
[4]京急品川駅・JR品川駅
東京都港区にある。JRでは京浜東北線、山手線、横須賀線、東海道線、東海道新幹線が乗り入れ、他に京急本線が通る。このパターンでは、当駅の南側で、京急の線路がJRの線路を越えている。
図 5. 品川駅から(2019.08.10)筆者撮影
[5]JR武蔵浦和駅
埼玉県さいたま市浦和区にある。JR埼京線とJR武蔵野線が停車し、埼京線の線路が武蔵野線の線路を越える。当駅では、埼京線と新幹線が並行している。乗車人員は、53,963人である。
図 6. 武蔵野線武蔵浦和駅(2019.09.23)筆者撮影
(3) 駅間で
駅間距離が比較的長い時、近くに駅がないにもかかわらず片方の線路がもう一方を越える場合である。その為、駅間距離が短い場合には、(2)との区別が困難であることもある。
[1]JR田端―駒込間
JR田端駅とJR駒込駅の間では、JR山手線とJR湘南新宿ラインが立体交差している。湘南新宿ラインの線路は、山手線の線路の下を通り、トンネルをくぐって、更に京浜東北線の線路の下を通っている。
[2]福井県鳩原ループ線周辺
福井県敦賀市にある。北陸本線の上り線専用であり、ループ線に入る前に下り線をオーバークロス、つまり越えるのである。
[3]えちぜん鉄道福井口―まつもと町屋間
この区間では、えちぜん鉄道三国芦原線がJR北陸本線を越えている。北陸新幹線が開業すると、北陸新幹線はこの立体交差を越えることになる。
図7. 交差をサンダーバードが通る(2019.09.05)筆者撮影
[4]JR鶴見駅周辺
鶴見駅から横浜寄りを見ると、JR鶴見線が他のJR路線や京急を越えている。また、東京寄りを見ると、鶴見川を過ぎた辺りで、横須賀線など新川崎駅方面に向かう路線が他のJR路線を越えている。
(4) いつの間にか、ある意味越えている
このパターンは、可視的なパターンである(1)〜(3)に含まれないものである。これらの多くは、一方或いは両方が地下区間であるものである。
[1]京王下北沢駅・小田急下北沢駅
東京都世田谷区にある。小田急線が地下化されたことでこのパターンに該当することになった。ただ、地下化される前もされた後も京王井の頭線が小田急線を越えるという構図は変わっていない。
[2]京王渋谷駅・東急渋谷駅・JR渋谷駅・東京メトロ渋谷駅
渋谷駅では、パターン2で挙げた箇所以外でも一方がもう一方を越えることが起こっている。一つ目は京王井の頭線と東急田園都市線であり、道玄坂上辺りで京王井の頭線が東急田園都市線を越えている。二つ目は東急田園都市線とJR、東京メトロ半蔵門線であり、宮益架道橋辺りで、JRが他二つを越えている。三つ目は、東京メトロ半蔵門線・東急田園都市線と東京メトロ副都心線・東急東横線であり、前者が宮益坂下交差点で後者を越えている。
[3]武蔵野南線
武蔵野南線と呼ばれることもあるが、鉄道要覧によれば、武蔵野線の一部である。旅客運用はほぼ無い。梶ヶ谷にある貨物駅の区間などを除き、多くの区間では地下を通っており、その地下区間で交差する東急田園都市線や小田急線はある意味越えていることになる。
[4]東京メトロ大手町駅周辺
東京メトロ大手町駅には、半蔵門線、東西線、丸ノ内線、千代田線が乗り入れている。半蔵門線と東西線は東西方向で通り、千代田線と丸ノ内線は南北方向で通っている。これらが交差する際に、一方が上を通り、もう一方が下を通っているのである。
(5) 将来
近い将来に開業或いは開通する路線も、何らかの線路を越えることがありうる。このパターンは補助的なもので、このパターンのものは上の4つのいずれかにも該当する。
[1]リニア中央新幹線
リニア中央新幹線は、品川駅を起点として、山梨リニア実験線や名古屋駅を通ることになっている。品川駅からしばらくは大深度地下を通るため、地上を走る多くの鉄道路線の下をくぐることになる。
3. 参考文献
国土交通省鉄道局監修『平成三十年度 鉄道要覧』
「銀座線渋谷駅移設に伴う線路切替・ホーム移設工事のため銀座線 渋谷〜表参道駅間、青山一丁目〜溜池山王駅間を運休します。」
https://www.tokyometro.jp/news/images_h/metroNews20190612_1.pdf(2019年10月13日閲覧)
「2018年度各駅の乗車人員」
https://www.jreast.co.jp/passenger/index.html(2019年10月13日閲覧)
「2018年度乗降人員」
https://www.tokyu.co.jp/railway/data/passengers/(2019年10月13日閲覧)