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りんかい線「海を越える・会社を越える」

平成30年度入学 旭アサ

 

1.はじめに

大崎駅からお台場、臨海副都心方面へ向かい新木場へと至るりんかい線。今年の駒場祭発表テーマ「越える鉄道」にちなみ、本稿ではりんかい線を「海を越える鉄道」「会社を越える鉄道」の二つの側面から考察した。

「海を越える」とは、路線が東京湾の下を通っていることをいう。大崎・新宿方面の電車は、東京テレポート駅を出た後、次の駅・天王洲アイルへと向かう途中に東京湾の下を通過する。「会社を越える」とは、路線でいうりんかい線と埼京線・川越線、会社でいう東京臨海高速鉄道・JR東日本間の相互直通運転のことである。

 

2.「海を越える鉄道」

 本項では、りんかい線を「海を越える鉄道」という観点から考察する。

海を越えるという点でいうと日本で真っ先に思い浮かぶのは青函トンネルだろう。しかし今回取り上げるりんかい線も海を越える鉄道なのである。天王洲アイル駅と東京テレポート駅間で東京港の下を走っているからだ。『東京超詳細地図』によれば、天王洲アイル駅を出た後、線路は大きく東に舵を切り京浜運河の下を通過する。そのまま品川ふ頭の地下を通り、東京港を横断する。首都高湾岸線の東京港トンネルはりんかい線のトンネルの南側にある。りんかい線は東京港を横切った後、潮風公園の地下を通りフジテレビ付近の東京テレポート駅に至る。

りんかい線が海の下をくぐっているというのはこれまであまり意識されてこなかった点であると思う。りんかい線は大崎駅を出るとすぐに地下に入り、再び地上に戻るのは東雲駅の手前である。ほとんどが地下区間であることに加えて、海底トンネルの中を走るといっても青函トンネルのように長大なものではないので、海を渡る鉄道としての側面が注目されてこなかったものと思われる。実際、天王洲アイル駅から東京テレポート駅までの間はほんの3、4分ほどの距離しかない。

東京テレポート駅入口 (東京テレポート駅 2019.10.02

 

3.「会社を越える鉄道」

 本項では、りんかい線を「会社を越える鉄道」という観点から考察する。

りんかい線は大崎から新木場間であるが、大崎から先で埼京線に相互直通運転を行っている。りんかい線を運営しているのは東京臨海高速鉄道で、埼京線はJR東日本である。相互直通運転のため、りんかい線の70-000系はJR線内でも運用に就き、また埼京線のE2333000番台はりんかい線内でも運用についている。

りんかい線内では全列車が全ての駅に停車する。埼京線内では各停、快速、通勤快速の三つの種別がある。『東京時刻表』によれば、日中では2〜3本に1本がりんかい線と埼京線との直通列車であり、直通列車の埼京線内での種別は快速である。

直通運転に関する表示や案内などを車両や駅で探すことにした。駅・車両での表示や案内、車内放送などについて写真とともに紹介する。

(1)渋谷駅における表示

渋谷駅3・4番線が埼京線用のホームである。上の写真では埼京線と書かれた下に小さく直通先のりんかい線とも書かれている。下はホームにある電光掲示板の表示である。4番線の次の電車はりんかい線直通各駅停車の新木場行きであるが、終着新木場までの途中停車駅が全て表示されるようになっている。

(上)3・4番線の表示(渋谷駅 2019.10.02

(下)4番線の電光掲示板(渋谷駅 2019.10.02

 

(2)車両での表示

下の写真は渋谷駅停車中の新木場行きの70-000系である。70-000系は車両側面にある電光表示板で「新木場」「りんかい線直通」の文字が交互に表示されるようになっている。

70-000系車体側面(渋谷駅 2019.10.02

 

 下の写真は70-000系内部の様子である。車内ドア上部にある電光掲示板では、大崎から線の色を変えることで路線が変わることを表現している。電光掲示板の下には路線図が表示されている。路線図ではりんかい線、埼京線、川越線の駅が掲示されており、りんかい線内はJRとは別会社である旨の注意書きもある。りんかい線の路線記号はR、埼京線の路線記号はJAであり異なるが、駅ナンバリングは新木場駅を1番としてスタートし、路線を超えて大宮駅の26番まで通しの番号が振られているのは面白い。

 

70-000系車内の表示(恵比寿駅 2019.10.02

 

 上の写真はE233系内の表示である。JR線内と同様の形式で途中停車駅が表示されているが、りんかい線内は路線カラーに合わせて青色が使われている。また車両側面の電光掲示板では、例えば下の写真にある新木場駅停車中の川越行き快速では、「りんかい線」「埼京・川越線直通」「For Kawagoe」の下に、東雲から終着川越までの途中停車駅が表示されるようになっている。

 

E233系車内、りんかい線の案内表示(大崎駅 2019.10.02

 

E233系側面の表示(新木場駅 2019.10.02

 

(3)大崎駅における表示

 大崎駅8番線(上)と7番線(下)の駅名標の写真である。上の写真では大崎から先は湘南新宿ラインとりんかい線の二手に分かれ、次の駅は西大井と大井町の二駅が書かれているのに対して、下の写真ではりんかい線だけが書かれている。

 

 

(上)(下)大崎駅ホームにある駅名標(大崎駅 2019.10.02

 

(4)新木場駅における表示

写真は新木場駅ホームにある電光掲示板である。種別については、快速を薄い水色、埼京線に直通する各停を緑、りんかい線内のみの各停を濃い水色で表現している。またJR線内に直通する列車は、JR線内の停車駅の案内が流れるようになっている。りんかい線内では列車は全ての駅に停車するので特別の案内は不要と見られる。

新木場駅ホームにある電光掲示板(新木場駅 2019.10.02

 

(5)JR・りんかい線の共通点

 これまではどちらかというとりんかい線とJRとの差異に注目してきたが、一方でりんかい線とJRで共通する部分もある。その例として発車サイン音とNewDaysを取り上げたい。発車サイン音はJR東日本の汎用チャイムと同様のものを使用している駅が多い。例えば、国際展示場駅や東雲駅では「cielo estrellado」を採用しており、また新木場駅では「water crown」を採用している。その中で独自色を打ち出しているのが東京テレポート駅あり、作品の舞台となったこともあってフジテレビ制作のドラマシリーズ「踊る大捜査線」の劇中曲「rhythm and police」「CX」が使用されている。

 また、東京テレポート駅構内には、JR東日本圏内ではお馴染みのコンビニ・NewDaysの店舗がある。一つ違うところがあるとすれば、この写真では見づらいが、NewDaysのロゴの左側に東京臨海高速鉄道のマークがあることである。

NewDays(東京テレポート駅 2019.10.02

 

4.終わりに

りんかい線について「海を越える」「会社を越える」という観点から考察を進めてきた。

海を越える鉄道と銘打ったものの、なにぶん距離が短く範囲も港湾内にとどまるので海を渡る、という感じはしないかもしれない。しかしトンネルの構造等について調べればもっと面白いことがわかるかもしれないと思った。

また、りんかい線内の駅の案内表示では、停車駅と行き先が表示されているものの、停車駅の表示は比較的小さい。行き先に「川越」「大宮」と書かれても東京近辺の地名に不慣れな人であればどの方面に向かうのか分かりにくい。そもそも川越や大宮まで乗り通す人は稀であり多くの人は渋谷や新宿で降りるまたは乗り換えるはずである。りんかい線に限った話ではないが、列車の行き先の分かりやすさの点は改善が必要であると思う。例えば、大崎行きのりんかい線については「渋谷・新宿方面は大崎駅で乗り換え」と案内したり、埼京線直通列車については「渋谷・新宿方面 大宮行き」と表示したりするのはどうだろうか。単に情報として間違っていないからいいのではなく、利用者の目線に立ち、利用者がどんな情報を知りたいのかを考えることが必要なのである。

 

5.参考文献

『コンパス時刻表4月号臨時増刊 マイライン東京時刻表』(交通新聞社)

『ハンディ版 東京超詳細地図 2018年版』(成美堂出版)

写真は全て筆者が撮影したものである。


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