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神戸高速線における乗り入れ

平成30年度入学 近ヒメ

 

今回のテーマ「「こえる」鉄道」というのを聞いて真っ先に思いついたのが神戸高速線だった。昔からよく使っていたし、「列車を保有しない」というのが気になって仕方がなかった。今回は「列車を保有しない」とはどういうことかを簡単に説明してから、神戸高速線がどのようにしてできたか、相互乗り入れがどのように行われたか、そして個性豊かな乗り入れ私鉄4社についても紹介したい。

1. 神戸高速線の概要

1)第三種鉄道事業者

神戸高速鉄道株式会社は第三種鉄道事業者であるが、「第三種鉄道事業者」について簡単に説明する。第三種鉄道事業者とは鉄道施設を保有しているものの列車の運行などを行わない会社のことである。ただ、線路だけあっても仕方ないので、列車の運行を第二種鉄道事業者が行う。関東地方では、こどもの国線(長津田―こどもの国)が一例である。鉄道施設は横浜高速鉄道株式会社が保有しているが、運営は東京急行電鉄株式会社が行なっているのだ。

話を神戸高速線に戻そう。鉄道施設の保有は神戸高速鉄道株式会社が行い、駅業務、列車の運行、施設の保守管理を阪神電気鉄道株式会社、阪急電鉄株式会社、神戸電鉄株式会社が行なっている。

 

2)路線

東西線:西代―元町(5km)、高速神戸―阪急神戸三宮(2.2km

南北線:湊川―新開地(0.4km

少し分かりにくいが、西代駅、元町駅、阪急神戸三宮駅、湊川駅自体はそれぞれ山陽電鉄、阪神電鉄、阪急電鉄、神戸電鉄の駅であって、神戸高速鉄道株式会社が保有する施設ではない。

神戸高速鉄道株式会社が保有する6つの駅は全て地下にあるのも特徴。

図1. 神戸高速線の路線図

 

3)沿革

東西線、南北線を分けて紹介する。

[1]東西線

東西連絡線敷設免許自体は1952年に取得していたが、神戸高速鉄道の建設が正式に決定したのは1954年のことであった。都市計画によるものである。神戸高速鉄道株式会社は神戸市と阪神、阪急、山陽、神鉄などの共同出資によって1958年に設立された。運輸営業が始まったのは1968年のことで、東西線を使用する3社(阪神、阪急、山陽)は協議の末、阪神は大石駅まで、阪急は六甲駅まで、山陽は須磨浦公園駅までを乗り入れ区間とした。これと同時に山陽は西代―電鉄兵庫を廃止した。

乗り入れを行う場合、架線電圧を合わせなければならない。1966年地点で山陽電鉄は1500V、阪急電鉄神戸線、阪神電鉄本線では600Vで、どちらかに合わせる必要があった。そこで、阪急電鉄は1967108日に神戸線、伊丹線、甲陽線、今津線の架線電圧を1500Vに昇圧、阪神電鉄は同年1112日に本線、当時の西大阪線、武庫川線の架線電圧を600Vから1500Vに昇圧した。

19884月、神戸高速鉄道株式会社は1986年公布の鉄道事業法での第三種鉄道事業者に、4社(阪神電気鉄道株式会社、阪急電鉄株式会社、山陽電気鉄道株式会社、神戸電鉄株式会社)は第二種鉄道事業者になった。

1998年に乗り入れ区間が大きく変わる。まず、阪急から山陽方向についてだが、新開地止まりとなった。これは山陽電鉄に乗り入れ可能な編成が8両編成までのものに限られ、神戸線の運用の障害となっていたためである。1編成の長さについて補足すると、山陽は長くても直通特急や特急の6両編成であり、山陽に乗り入れる阪神車両も最大6両だった。これに対し阪急は8両や10両のものもある。ちなみに、神戸高速線も1編成8両までしか対応できないので10両のものが神戸高速線に入る場合は増解結する。

山陽から阪急については現・阪急神戸三宮までの乗り入れとなった。

阪神と山陽については山陽姫路―阪神梅田で直通特急が運行され始めた。これは1995年の震災後の乗客減少に対する打開策として1996年に山陽から阪神に打診したものである。

2. 山陽電鉄本線、阪神本線、阪急神戸線を含む東西線の路線図

 

2010年に事業形態の大幅な変更があり、第二種鉄道事業許可の区分が阪神電鉄は西代―元町、阪急電鉄は新開地―阪急神戸三宮、神戸電鉄は湊川―新開地となり山陽電鉄は神戸高速線における第二種鉄道事業は廃止ということになった。しかし、各社の運行区間に変化はない。管理業務は各社が第二種鉄道事業許可の区分に従って行うが重複のある新開地駅、高速神戸駅、新開地―高速神戸は阪神電鉄が行うことにした。駅看板は西元町駅、大開駅、新開地駅(東西線ホーム)、高速神戸駅、西元町駅については阪神電鉄との共通デザインになった。花隈駅、新開地駅(南北線ホーム)はそれぞれ阪急電鉄、神戸電鉄との共通デザインになった。

[2]南北線

現・神戸電鉄(神有三木電気鉄道)の起点はもともと湊川駅だったが、ここでは神戸市電としか接続していなかった。この状況を改善すべく、神戸電鉄は湊川―国鉄神戸の免許を得た。1954年の都市計画では新開地を途中駅として阪神、阪急、山陽と接続し、国鉄神戸駅の高架線とつながるはずだった。しかし、既成市街地において路線を延長するのは困難であったので区間は湊川―新開地となり、1965年に免許自体も神戸高速鉄道株式会社に譲渡してしまった。1968年に神戸高速鉄道が湊川―新開地を南北線として開業させた。また、かつて阪神電鉄、山陽電鉄が湊川まで乗り入れる計画があり、阪神元町駅はその計画の一環で作られたものであったが、神戸高速線の開業で阪神は取得していた権利を放棄した。

 

2. 乗り入れ各社の紹介

ここからは神戸高速線に乗り入れる4社を簡単に紹介する。

1)阪神電気鉄道

路線は、本線(元町―梅田)、武庫川線(武庫川―武庫川団地前)、阪神なんば線(尼崎―大阪難波)。

大阪と神戸を結ぶ私鉄。阪神甲子園球場の最寄り駅である甲子園駅がある。赤胴車や高加速・高減速の「ジェットカー」も有名である。2009年には阪神なんば線が開業し、阪神と近鉄の相互乗り入れが始まった。

 

(左)ジェットカーのひとつ、5700系(西元町駅 2019.08.07

(右)阪神神戸三宮駅には近鉄車両も乗り入れる(阪神神戸三宮駅 2019.08.07

 

2)阪急電鉄

路線は神戸線(神戸三宮―梅田)、甲陽線(夙川―甲陽園)、伊丹線(塚口―伊丹)、宝塚線(宝塚―梅田)、箕面線(石橋―箕面)、今津線(宝塚―今津)、京都線(十三―河原町)、嵐山線(桂―嵐山)、千里線(天神橋筋六丁目―北千里)。

マルーン色の車両が特徴的。梅田―十三では神戸線、宝塚線、京都線の3複線となっていることも有名。宅地開発や娯楽施設、百貨店を組み合わせた私鉄経営の原型を作った小林一三も有名。2006年に経営統合を果たした阪神電鉄とは長年のライバル。

阪神阪急ホールディングスグループは2009年から「阪急阪神 未来のゆめ・まちプロジェクト」を推し進めており、これが10年目になるのに合わせて阪神、阪急共通デザインの「SDGsトレイン 未来のゆめ・まち号」を運行している。阪神、阪急が共通デザインのラッピング電車を運行するのは初めてのこと。

 

(左)阪急7000系、マルーン色の車体(高速神戸駅 2019.08.07

(右)「SDGsトレイン 未来のゆめ・まち号」(花隈駅 2019.08.07

 

3)山陽電鉄

路線は本線(西代―山陽姫路)、網干線(飾磨―網干)。

海が近く、車窓から海が見えることもあって愛称はシーサイド・エクスプレス。阪神と相互直通運転を行っており、阪神も近鉄奈良線に乗り入れているので近鉄線への直通運転も可能。実際2013年には「姫路〜奈良 直通列車で行く山陽・阪神・近鉄私鉄3社車庫巡り」も実施された。日本初のアルミニウム合金製車体を導入している。

(左)山陽の最新鋭、6000系(大塩駅 2018.09.11

 

4)神戸電鉄

路線は有馬線(湊川―有馬温泉)、三田線(有馬口―三田)、公園都市線(横山―ウッディタウン中央)、粟生線(鈴蘭台―粟生)。新開地から列車は運行される。源平合戦の「鵯越の逆落し」で有名な鵯越を通過し有馬温泉や三田市、JR粟生駅を結んでいる。有馬線は全線の7割が10‰以上の勾配区間で、山岳路線としての側面もある。

 

(左)6500系(新開地 2019.08.07

(右)3000系、配色から「ウルトラマン電車」のあだ名もある(新開地 2019.08.07

 

3. 駅の紹介

駅看板などの比較も兼ねて西代、湊川、元町、阪急神戸三宮も簡単に紹介する。

1)西代

山陽電鉄の起点駅。本社ビルが隣接している。駅看板のナンバリングをよく見ると山陽のナンバリング「SY 01」と阪神の「HS39」が両方書かれている。

(上)西代駅の駅看板(西台駅 2019.08.07

 

2)高速長田

神戸市営地下鉄、長田駅との乗り換えができる。長田区役所、警察署、消防署の最寄り駅でもある。神戸高速鉄道ができる前は山陽電鉄と神戸市電が直角に交差していた。

 

(左)高速長田駅の駅看板(高速長田駅 2019.08.07

(右)駅入口の看板(高速長田駅 2019.08.07

 

3)大開

駅は神戸市兵庫区水木通にあるのだが、漫画家の水木しげるが紙芝居作家時代に住んでいたのが水木通。水木荘というアパートを経営していたので水木というペンネームになったそうだ。

  

(左)大開駅の駅看板(大開駅 2019.08.07

(中)駅入口の看板(大開駅 2019.08.07

(右)水木通の看板(大開駅前 2019.08.07

 

4)新開地

地下1階に南北線ホーム、地下2階に東西線ホームがある。東西線は阪神の駅看板デザインを使用しているが、南北線では神戸電鉄のデザインを使用しており神戸電鉄のナンバリング「KB01」も施されている。

阪急はこの駅までの乗り入れとなり、ここで折り返すので基本的に真ん中の1線を使用する。駅入口の看板を見ると高速長田や大開では「阪神 神戸高速線」だったのが「阪神・阪急・神鉄 神戸高速線」となっている。

 

(左)新開地駅東西線ホームの駅看板(新開地 2019.08.07

(右)新開地駅南北線ホームの駅看板(新開地 2019.08.07

 

(左)この駅で折り返す阪急の車両(新開地 2019.08.07

(右)駅入口の看板(新開地 2019.08.07

 

5)湊川

関西初の地下駅。神戸市営地下鉄の湊川公園駅との乗り換えができる。

(上)湊川駅の駅看板(湊川 2019.08.07

 

6)高速神戸

JR神戸駅、神戸市営地下鉄ハーバーランド駅と接続し神戸市営地下鉄大倉山駅との乗り換えも可能。入口の看板は「阪神・阪急 神戸高速線」となっている。奇数ホームは阪急方面、偶数ホームは阪神方面となっている。

 

(左)高速神戸駅の駅看板(高速神戸 2019.08.07

(右)駅入口の看板(高速神戸 2019.08.07

 

7)西元町

かつて三越があった。コンコースや出入り口には港町である神戸をイメージしたイラストがある。

 

(左)西元町駅の駅看板(西元町駅 2019.08.07

(右)駅入口の看板(西元町駅 2019.08.07

 

8)元町

JR元町駅との乗り換えが可能。入口の看板が「阪神電車」のみになっている。

 

(左)元町駅の駅看板(元町駅 2019.08.07

(右)駅入口の看板(元町駅 2019.08.07

 

9)花隈

入口の看板が「阪急・神戸高速線」になっている。駅看板などは阪急のものになっている。近くに花隈城跡がある。

 

(左)花隈駅の駅看板(花隈駅 2019.08.07

(右)駅入口の看板(花隈駅 2019.08.07

 

10)阪急神戸三宮

真ん中の線は折り返し用。もともと地下式にする予定だったが工事費用がかかるので高架による乗り入れになった。

(上)阪急神戸三宮駅の駅看板(阪急神戸三宮駅 2019.08.07

 

4. 参考文献

平岡忠、大加戸宗昭『兵庫の鉄道全駅 私鉄・公営鉄道』(神戸新聞総合出版センター)

『週刊 歴史でめぐる鉄道全路線 大手私鉄 11  阪急電鉄1』(朝日新聞出版)

『週刊 歴史でめぐる鉄道全路線 大手私鉄 12 阪神電気鉄道/阪急電鉄2』(朝日新聞出版)

『週刊 歴史でめぐる鉄道全路線 公営鉄道・私鉄 8 山陽電気鉄道/北神急行電鉄/神戸市交通局』(朝日新聞出版)

『週刊 歴史でめぐる鉄道全路線 公営鉄道・私鉄 14 神戸電鉄/能勢電鉄/北条鉄道/北近畿タンゴ鉄道』(朝日新聞出版)

『週刊 私鉄全駅・全車両基地 12  阪急電鉄1』(朝日新聞出版)

『週刊 私鉄全駅・全車両基地 21  阪神電気鉄道』(朝日新聞出版)

『週刊 私鉄全駅・全車両基地 27  山陽電気鉄道』(朝日新聞出版)

「こどもの国線路線情報 東急電鉄」

https://www.tokyu.co.jp/railway/data/train_line/kd.html 201984日閲覧)

「神戸高速線の事業概要 神戸高速鉄道株式会社」

http://www.kobe-kousoku.jp/business.html 201984日閲覧)

「時刻表・駅案内 神戸高速鉄道株式会社」

http://www.kobe-kousoku.jp/ekiinfo.html 201984日閲覧)

「会社情報 神戸高速鉄道株式会社」

http://www.kobe-kousoku.jp/company.html 201985日閲覧)

「阪急阪神 未来のゆめ・まちプロジェクト10周年記念SDGsの啓発メッセージを発信する「SDGsトレイン 未来のゆめ・まち号」を運行します 阪急阪神 未来のゆめ・まちプロジェクト(阪急阪神ホールディングスグループの社会貢献運動)」

https://www.hankyu-hanshin.co.jp/yume-machi/sdgstrain/top.html 201987日閲覧)

「神戸線[爽風 Kaze]  阪急ラッピング列車コレクション 阪急電鉄 鉄道情報ホームページ」

https://www.hankyu.co.jp/area_info/wrapping/kaze.html 201987日閲覧)

 

図、写真は全て筆者が作成または撮影したものである。


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