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一周きっぷ

平成29年度入学 長ナノ

 

1.はじめに

 私は今回「一周きっぷ」というテーマで書くことになったのだが、特にこれといって書くことがないので(何しろ締切の2時間前なのである)困っている。

 そもそも個人的な信条(?)から一周きっぷを使う機会はあまりないので、一周きっぷに関する話を3つばかり載せて終わりにしようと思う。特に関連はないので、一周きっぷについてあらかた知っている読者は3つ目くらいから読むといいのではないかと思う。

 

2. 一周きっぷとは

 まずは一周きっぷについて簡単に紹介する必要があろう。

一周きっぷとは、きっぷの発駅と着駅が同じきっぷである。厳密に言えば、旅客営業規則第68条第4項第1号に定める、「計算経路が環状線1周となる場合」にあたるので、発駅と着駅が同じ「片道乗車券」(旅規第26条第1号)にあたると言えると言いたいのだが、そうでもない。

なお、一周きっぷと似た概念として「O型きっぷ」というものがあるが、これは券面も同一でなければならないので、一周きっぷに比して狭い概念といえる(私見)。

私の考える「一周きっぷ」の要件は、発駅と着駅が同一であることが可能であることのみ、つまり実効力に即したものであれば足りるというものである。つまり、JR駅発・社線の同一駅着のきっぷも、一周きっぷとみなすことはできるのではないか。この場合、片道乗車券であっても、旅規第68条第4項第1号に定める「計算経路が環状線一周」にはあたらないこととなり[1]、上記の説明は当たらないこととなる。

ところで、皆さんも使ったことがあるかもしれないが、一周きっぷの中で最もメジャーなものはおそらく、東京都区内→東京都区内、であろう。これは窓口でなくとも発券できる場合が多く(詳しくは後述)行きと帰りを別ルートにしつつ運賃を抑えられるので人気のあるきっぷといえる。

例えば、東京と京都の往復の場合を見てみよう。東海道線経由で営業キロは513.6km、往復学割で13120円となる。これに対し、東京→(東海道・湖西・北陸・北陸新幹線・高崎・東北)→東京のきっぷで営業キロは1177.9km、学割で11050円となる。山科と京都の往復運賃は380円であるから、これを足しても単純往復より安く、より遠回りのルートを選択できるのである。

といったあたりで書くことがなくなってきたので、次の章に移る。(次の章との関連があることを含意しない。)

 

3. 一周きっぷの発行方

発行方とは何か、と思われた方もいるかもしれない(いなかったら飛ばそう)。発行方とは、お察しの通り発行方法のことである。例えば旅客営業取扱基準規程には、「乗車券の発行方」という章があり、各種乗車券類の発行方、つまりその様式についての記載がなされている。

ここで述べる発行方は、そのような堅いものに限らず一般的な発行方法、例えば一周きっぷの買い方といったものであるが、折角なので書いてみたところである。

さて、発行方法といっても特に書くことはないので、豆知識的なものばかりを書くことにする。

突然のクイズ、JRで最も短い一周きっぷは、どこの区間でしょうか。東京に住んでいる方なら、もちろんお分かりだろう。

神田―御茶ノ水―秋葉原―神田の区間、2.9kmである。この区間は唯一の初乗りで一周できる区間でもある。最長の一周きっぷについては各所で検討がなされているうえ、今後変わる可能性が高いので特には触れない[2]

話を元に戻して、一周きっぷをどのように出すか、ということについては、基本的に窓口で、となる。もちろん神田―神田のような場合、初乗りのきっぷを購入すれば乗れると思われるが、マルス券の場合は発駅・着駅が同一のきっぷは自動券売機では発券できない[3]。そうすると、窓口に並んで買うことになるが、140円のきっぷを並んでまで買うかどうかは、読者にお任せするところである。

自動券売機で買える一周きっぷとしては、特定都区市内発着のきっぷがある。これは買うときに発駅と着駅を同一の特定都区市内の別駅に設定したうえで、条件を満たす[4]ことで、買うことができる。

また、こういうことを言うと邪道な感じがするが、西日本や北海道で設置の進む、オペレーターつき自動券売機であれば、オペレーターに依頼して一周きっぷを発売してもらえる。

さらに邪道な感じがするが、J-WESTカードというカードをもっていると、きっぷを電話予約することができる。条件を満たせば、e5489の予約として扱われるので自動券売機で受け取ることができる[5]

いろいろ書いてみたが、基本的には窓口で買うものである。どちらにせよメリットの出てくる長距離では学割証も出さなければならないのだから、手間にあまり差はないだろう(?)。

ところで、東京メトロは環状乗車券の打ち切り規定が存在しない。それ以上の扱いについては特に述べないが、少なくとも自動改札機は発駅からの運賃判定しか行わないので、1周を超えて乗車することは可能であろう[6]

書くことがまたなくなったので、一周きっぷに関する私なりの考えを次の章で書くことにしたい。

 

4. 一周きっぷの使い方

前に述べたように、一周きっぷは長距離で効果を発揮する場合が多い。もっとも、それだけではないというのが私の考え方である。

東京圏の場合、途中下車の制約があることは皆さんご存知だろう。東京近郊区間として、とても広大なエリアが設定され、その区間内完結のきっぷはすべて有効1日・下車前途無効となるが、どのような経路を通っても最安経路で計算できる。

私は途中下車して街を歩くのが好きなので、この仕組みはたまったものではない。解決策としては新幹線を含んで100kmを超えることだが、100kmを超えると1940円もするので困ってしまうし、一周させるにちょうど101km〜20kmの区間を探すのもまた難しい。

そこで有効なのが、私鉄である。新幹線を含んで私鉄連絡、JRと私鉄通算で100kmを超えることで、基本的に全区間で途中下車可能となる。例えば、池袋→(山手2・東北・東北新幹線・川越線・八高)→東飯能→(西武線)→池袋の場合、運賃はJR1140円・西武500円で計1640円となり、営業キロはJRが64.5km、西武線が44.5kmで100kmを超えている。JRのみでは最低1940円ないと途中下車できないので、300円も節約(?)できるのである。

もっとも、この方法にも弱点はある。私鉄のきっぷは主な区間を除いて運賃登録がなされておらず、金額入力という操作を必要とするため、誤発売のケースが生じやすい。そのため、発売を渋る駅員がよく見受けられるのが、買いやすさという面で弱点となっている。

こんなことを書き連ねているのだが、少なくともJR完結に関しては、一周きっぷを僕はあまり使わない。その理由は、遠距離逓減という現行の運賃制度を充分に活かせていないと感じるからである。

例えば、都区内発着のきっぷは、利用経路が重ならないように千葉方面に延長すれば、通常よりかなり安く往復[7]できるし、他の方面についてもあまりいい経路は取れないが延長できる。しかも連続にしてしまえば、有効期間を延長して余裕をもって出かけることもできる。

一周にもできたが千葉方面に延長したきっぷ。

連続にすることで有効期間を延長している。

 

もっとも、一周きっぷにも一部の人々を惹きつける良さがあるのだろう。皆さんも積極的に使いましょう(?)

 

5. 終わりに

以上のように駄文を書き連ねてしまったが、これを機に旅客営業規則などの規則類にも関心をもってもらえるとありがたいと思う。

すでに締め切りは過ぎてしまったので、早めに提出すべく、この辺で筆をおくこととしたい。



[1] 旅客連絡運輸規則第16条第1号は、「普通旅客運賃計算経路の連続した区間を片道1回乗車船(以下「片道乗車」という。) する場合に発売する。ただし、旅客規則第68条第4項の規定により営業キロ、擬制キロ又は運賃計算キロを打ち切って計算する場合は、当該打切りとなる駅までの区間のものに限り発売する。」と定めており、JR線内で環状線一周に当たらない限り、片道乗車券として発売可能な旨を定めている。

[2] 面倒くさいだけ

[3] 例外はある。

[4] 中心駅から200kmを超えた場合(東京山手線内の場合は東京駅から100kmを超えた場合)

[5] これを自動券売機で「買う」といえるかは読者の判断にお任せする。なお、e5489はえきねっとと異なり、予約時に決済される。

[6] 規則に照らして挙動が問題ないという意味ではない。

[7] 厳密な意味での往復ではない


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