大阪環状線の駅探訪
平成30年度入学 近ナラ
1. はじめに
2019年五月祭のテーマ「円環をめぐる鉄道」のメインとも言える環状線。本稿では大阪環状線を扱う。筆者は大阪市阿倍野区出身で天王寺駅からよく大阪環状線に乗っている。まず、大阪環状線の特徴的な運行形態を述べる。その後、大阪環状線で筆者があまり普段使わない4駅(桜ノ宮・天満・野田・福島)を実際に探訪し、そこで見たものから各駅を紹介する。また、駅周辺の分析には都市計画法に基づく用途地域を参考にした。駅周辺の様子は2019年3月11日現在の情報である。
大阪城公園駅(2019.03.10)
2. 大阪環状線運行形態紹介
ここでは大阪環状線の特徴的な運行形態についてまず解説する。山手線のような環状運転する電車だけではない。大阪環状線と線路がつながっている桜島線。関西本線。阪和線に直通するものもある。
また、「はるか」、「くろしお」といった特急列車も一部区間で線路を使用する。快速電車は天王寺から外回りに周回し、天王寺に戻ってきたところで運転終了となる。通過するのは今宮・芦原橋・野田の各駅である。
特急列車は一部西九条駅に停車するものもあるが、新大阪あるいは天王寺まで停車せずに運転されるものが多い。
(1)環状線普通電車
まずは環状運転する電車。323系に統一されつつあるが、まだ一部で201系も見られる。8両編成である。京橋・大阪城公園・大阪・天王寺を起点に周回を続ける。各駅に停車する。行き先案内では普通大阪環状線と表示される。旅客案内では内回り・外回りという言葉を用いる。例えば環状線内回り普通弁天町・西九条・大阪方面行きといった具合である。
(2)桜島線直通電車
天王寺から内回りに環状線を走り、西九条から桜島線に入る。323系・201系で運転される。8両編成である。全列車各駅に止まる。普通ユニバーサルシティ方面桜島行きと案内される。
(3)関西本線直通電車
関西本線に直通する電車は大和路快速と区間快速がある。221系で運転される。8両の場合は4+4の場合と8両1編成の場合がある。日中の大和路快速は関西本線内での需要に合わせて6両で運転される。区間快速は平日の朝夕ラッシュ時に運転され、環状線内は各駅に停車するが、関西本線内では快速運転を行う。その意味で「区間快速」である。
(4)阪和線直通電車・列車
快速電車は関空・紀州路快速と直通快速がある。電車特定区間は阪和線鳳までなので列車と呼べるかどうかは微妙である。旅客案内では電車である。天王寺から外回りに環状線を走り、天王寺に戻って運転終了となる。関空・紀州路快速は快速運転を行う。直通快速は朝夕ラッシュ時の運転で環状線内は各駅に停車する。223系または225系で運転され、基本は4+4の8両で運転される。両形式の混結もある。
特急列車は「はるか」が281系、「くろしお」が283系・287系・289系で運転される。基本6両だが、3両増結して9両の時もある。天王寺から環状線を外回りに走り、西九条駅から貨物線に入る。あとで述べるが福島駅では地上を走る。梅田貨物線を通って新大阪へ向かう。
3. 都市計画用途地域用語解説
ここでは駅探訪の際の分析に用いる都市計画法に基づく用途地域の区分と概要について本文中で登場するものだけ簡単にお伝えする。蔵敷明秀『入門都市計画』(大成出版社・2010年)16-17頁によった。
(1)住居系地域
[1]第二種中高層住居専用地域
主として中高層住宅に関わる良好な住居の環境を保護する地域。病院、大学などのほか、1,500までの一定の店舗や事務所など必要な利便施設が建てられる。桜ノ宮駅で登場する。
[2]第二種住居地域
主として住居の環境を保護する地域。店舗、事務所、ホテル、カラオケボックスなどが建てられる。桜ノ宮駅、野田駅で登場する。
(2)商業系地域
[1]近隣商業地域
近隣の住宅地の住民に対する日用品の供給を行うことを主たる内容とする商業その他の業務の利便を増進する地域。住宅や店舗の他に小規模の工場も建てられる。野田駅で登場する。
[2]商業地域
主として商業その他の業務の利便を増進する地域。銀行、映画館、飲食店、百貨店などが集まる地域で、住宅や小規模の工場も建てられる。天満駅、福島駅で登場する。
(3)工業系地域
[1]準工業地域
主として、環境の悪化をもたらすおそれのない工業の利便を増進する地域。主に軽工業の向上やサービス施設等が立地する地域で、環境悪化が大きい工場のほかは、ほとんどのものが建てられる。桜ノ宮駅、野田駅で登場する。
4. 大阪環状線の駅探訪
(1)桜ノ宮駅
公式の乗り換え路線はない。2面2線。出口はホームの両端にある。
まずは駅の南側に出ようとした。係員がいないのでインターフォンで遠隔センターの係員を呼び出し、青春18きっぷをかざせば開場してくれた。南の両方の出入り口を撮影。
(左)桜ノ宮駅北口(2019.03.11) (右)桜ノ宮駅南口(2019.03.11)
北口と案内されている方に出ると、駅前にコンビニがあるが、第2種住居地域に指定されており、他は住宅が広がっている。少し歩けば日通倉庫があり、準工業地域に設定されているのも納得できる。さらに進めば、公園と市立病院があり、筆者も一時期お世話になったことがある。この都島公園は2019年3月16日のダイヤ改正で新たに開業したおおさか東線の区間の元となった、放出―淀川間の通称「淀川貨物線」の貨物駅である淀川駅があった場所の跡である[1]。病院の周辺は商業地域となっており、大阪メトロ都島駅がある。
南口と呼ばれている方に出るとロータリーがあるが第2種中高層住居専用地域に指定されており、住宅街なのであまり利用されていない。クリニックが数軒あり、飲食店はあまりない。
続いて駅の北側を見る。ホームが橋梁にはみ出している。大川という川を渡るのだが、駅はその手前にある。駅周辺は第2種中高層住居専用地域でコンビニと住居である。川の両側に遊歩道が整備されている。大川という名前なのだが、多くの利用者はこの川を渡った先を南に歩くと帝国ホテルや造幣局がある、商業地域を目指す。春には駅名にも入っている桜を鑑賞できる。水上バス乗り場もある。北側の改札に駅員がおり、みどりの窓口がある。
余談だが、当駅最寄りの簡易宿泊所の一室がかつて大阪環状線を走っていた103系をモチーフにしていることは一部の間で話題である。
桜ノ宮駅西出口(2019.03.11)
(2)天満駅
(左) 天満駅2番のりば(2019.03.11) (右) 天満駅出入口(2019.03.11)
1面2線と思いきや2面2線である。写真を見てもわかるように、2番のりばのホームをよく観察するとこちらに1番のりばがかつてあったことが容易に推察できる。1番のりばに向かう階段が駅のスペース上ホームまでまっすぐになっていないことからも後付けされたものということがわかるだろう。
改札は1つしかない。公式に大阪メトロの堺筋線との乗換駅である。高架下に店舗が入っている。駅を出ると日本一長い商店街で知られる天神橋筋商店街に出る。駅周辺は一部の準工業地域を除き全て商業地域に指定されている。
まずは南に向かう。商店街の案内に従って右折すれば大阪メトロ堺筋線の扇町駅に着く。近くにはフジテレビ系列の関西テレビがある。同じビルに、子供の娯楽施設であるキッズプラザ大阪がある。ただ、扇町駅から堺筋線に乗り、阪急線方面に向かうと大阪メトロと阪急の両方の運賃を取られ、高くなる。
天満駅に戻り、今度は駅の北側に歩いてみる。再び商店街の中を歩くことになる。大阪くらしの今昔館の看板が見えたらそこは大阪メトロ堺筋線・谷町線と阪急の天神橋筋六丁目駅である。大阪メトロ堺筋線の天下茶屋方面の当駅始発電車に乗る場合や、阪急線方面に向かう場合は当駅で乗り換えると良い。ここから梅田の繁華街に行きたい場合は天満駅まで戻って大阪駅に向かわなくても、谷町線で東梅田駅まで乗れば良い。
(3)野田駅
1面2線、快速通過駅。日中は15分に1本しか止まらない。公式に大阪メトロ千日前線との乗換駅。改札は1つしかない。
図6のように改札を出ると高架下に店舗が入っている。環状線の高架下は近隣商業地域に指定されている。他は第2種住居地域、準工業地域である。通りに出ると大阪メトロ千日前線玉川駅の出入口が見える。千日前線が地下を走っている通りは商業地域に指定されている。これを北方向に進むと10分程度で大阪メトロ千日前線野田阪神駅、阪神電車野田駅が見えてくる。さらに野田阪神駅の改札階に進むとJR東西線との連絡通路があり、JR海老江駅にも行くことができる。この辺りには駅が密集しているのである。
ちなみに海老江駅から東西線で一駅進んだ新福島駅からは大阪環状線の福島駅に向かうことができ、大阪環状線の各駅探訪の際には便利であり、気分転換にもなる。
JR野田駅出入り口(2019.03,11)
(4)福島駅
(左)JR福島駅出入り口(2019.03.11) (右)JR福島駅改札口(2019.03.11)
1面2線、最近になって快速停車駅となった。公式に阪神線との乗換駅である。大阪環状線自体は高架だが、梅田貨物線の線路は地上を走り、駅出口を出ると踏切がある。特急「くろしお」・「はるか」に乗車すると、ここを通過できる。駅の南側にJR東西線の新福島駅、阪神の福島駅がある。ただ、3駅はそれぞれつながっていないので地上乗り換えとなる。また、大阪駅と非常に近く、改札口で大阪駅までの道案内が掲示されている。周辺は商業地域に指定されている。オフィスビルが中心である。ちなみに東北本線にも福島駅がある。かつてどのように区別がなされていたかについてはここでは述べない。
5. さいごに
このように各駅を降りてみると新たな発見がある。大都市圏では意外な近接駅が見つかったりして興味深いので、今回紹介しなかった大阪環状線の駅も含めて、是非みなさんもやって見られると良い。その際には自治体がネット上で公開している用途地域と照らし合わせながら散策するとよりその駅についての見聞を深めることができる。
6. 参考文献
蔵敷明秀『入門都市計画』(大成出版社・2010年)
「地図情報サイトマップナビおおさか」
https://www.mapnavi.city.osaka.lg.jp/webgis/index.html (2019年3月20日閲覧)
『鉄道ダイヤ情報 2019年4月号』(交通新聞社)
*写真は全て筆者が撮影した。