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横浜市営地下鉄グリーンラインの延伸計画

平成29年度入学 東ウエ

 

1. 概要

横浜市営地下鉄グリーンライン(横浜市高速鉄道4号線)は、2008年3月に開業した、中山駅(横浜市緑区)と日吉駅(横浜市港北区)を結ぶ、全長13.0km・全10駅の路線である。

 

表1. 駅一覧

 

センター南駅―センター北駅間のブルーライン・グリーンライン並走区間。左の高架線がブルーラインで、右がグリーンライン。グリーンラインには架線があることがわかる。(センター南駅  2019.03.24)

 

2. 車両

開業以来10000形が使用されている。架線集電・リニアモーター駆動を採用していて、第三軌条集電のブルーラインとは異なる電化方式となっている。

開業時には4両編成15本が用意されたが、利用客増加に伴い、2014年度末に4両編成2本が増備されて、現在は4両編成17本体制で運行されている。

増備車両には、行先表示機のフルカラーLED化や、車内LCDの大型化などのマイナーチェンジがなされている。

2019年3月現在、第16編成が横浜市電風のラッピングをして運行している。

 

 

(左)10000形第3編成(センター南駅 2019.03.24)

(右)10000形第16編成(日吉本町駅 2019.03.24)

 

 

(左)10000形車両の側面デザイン(日吉駅 2019.03.24)

(右)10000形車両の運転台(日吉駅 2019.03.24)

 

 

(左)10000形車両の車内(日吉駅 2019.03.24)

(右)グリーンラインの線路。中央のリアクションプレートが目立つ(センター北駅 2019.03.24)

 

3. 環状化の計画

グリーンラインは「横浜環状鉄道」計画の一部であり、既存の中山―日吉間に加えて、元町・中華街―根岸―上大岡―東戸塚―二俣川―中山・日吉―鶴見の区間を開業させて、環状線(ただし山手線のような完全な環状線ではなく、鶴見―元町・中華街間が途切れたC字型の路線)にする計画がある。

表2.緑色はグリーンライン開業済み区間で、紫色はグリーンライン未開業区間。国土交通省運輸政策審議会「東京圏鉄道網図(都区部、横浜・川崎)」を加工して使用。

 

そこで、グリーンライン未開業区間が開業した場合の、既存の交通機関との比較を行った。グリーンラインの未開業区間の駅間距離は、簡単のため駅間の直線距離として、この距離をもとに運賃を算出した。また、所要時間は、中山―日吉間の表定速度(13.0kmを21分で走行するので約37km/h)を用いて算出した。

本数は日中の1時間あたりの本数で、複数の路線を乗り継ぐ場合は最も本数の少ない路線(ボトルネックになる)の本数とした。グリーンラインの本数は現行ダイヤと同じ8本と仮定した。所要時間に乗り換え時間は含まない。運賃は現金運賃。

 地元住民の独断と偏見で書かれている内容が多々あるがご容赦願いたい。

 

1)元町・中華街―根岸

 

路線名

区間

本数

所要時間

距離

運賃

JR根岸線

石川町―根岸

10

4分

3.3km

160円

グリーンライン

元町・中華街―根岸

8

5分

3.3km

240円

 

JR根岸線と競合するため、この区間だけではグリーンラインの優位性は無い。しかし、前述の国土交通省が公表した地図によれば、グリーンラインは本牧地区を経由しているため、横浜市営バスに次ぐ新たな本牧の公共交通となることが期待される。

 

2)根岸―上大岡

 

路線名

区間

本数

所要時間

距離

運賃

市営バス・133系統

根岸駅前―上大岡駅

2

24分

5.2km

220円

JR根岸線・京急線

根岸―新杉田―杉田―上大岡

6

32分※

7.5km

320円

グリーンライン

根岸―上大岡

8

6分

3.6km

240円

※新杉田-杉田の徒歩9分を含む

 現状では根岸-上大岡間は横浜市営バスが走っているが、30分に1本しかない。鉄道で移動するとしても、新杉田駅と杉田駅は700mほど離れているため、途中徒歩での移動が必要になる。グリーンラインは根岸―上大岡間の移動をより容易にすることが予想される。

 

(3)上大岡―東戸塚

 

路線名

区間

本数

所要時間

距離

運賃

神奈中・上202系統

上大岡駅―南高校経由―東戸塚駅東口

2

33分

7.4km

220円

神奈中・203系統

上大岡駅―芹が谷経由―東戸塚駅東口

4

30分

6.3km

220円

京急線・JR横須賀線

上大岡―横浜―東戸塚

6

16分

16.5km

370円

ブルーライン・JR横須賀線

上大岡―戸塚―東戸塚

6

15分

10.6km

400円

グリーンライン

上大岡―東戸塚

8

7分

4.3km

240円

 

この区間では、既存のバス路線が日中でも1時間に6本のペースで運行されていて、区間利用を含めて多くの需要があると思われる。東戸塚と上大岡のほぼ中間にある港南区芹が谷地域では、近隣の駅(東戸塚・上大岡・上永谷)に向かうには神奈中バスを利用することがほぼ必須の状況になっているが、グリーンラインが開通すると、短時間で既存の鉄道路線にアクセスして、主要駅に速やかに移動できるようになることが期待される。

 

(4)東戸塚―二俣川

 

路線名

区間

本数

所要時間

距離

運賃

相鉄バス・旭6系統

東戸塚駅西口―二俣川駅南口

5~6

45分

9.98km

240円

JR横須賀線・相鉄線

東戸塚―横浜―二俣川

6

20分

18.4km

370円

グリーンライン

東戸塚―二俣川

8

7分

4.3km

240円

 

東戸塚-二俣川間の相互移動であれば、グリーンラインが明らかに優位であろう。しかし、東戸塚と二俣川を最短経路の地下鉄で結ぶと、路線の大半がゴルフ場や公園(当然居住用の土地ではない)の地下を通ることになる一方で、既存の相鉄バスは、多少遠回りの経路ではあるが、左近山団地の各地域と東戸塚・二俣川の両駅を結ぶ役割を果たしている。グリーンラインができたとしても、この区間では地元住民の移動は引き続きバスが担うものと思われる。

 

(5)二俣川―中山

 

路線名

区間

本数

所要時間

距離

運賃

相鉄線・JR京浜東北線・JR横浜線

二俣川―横浜―中山

9

34分

25.8km

510円

相鉄線・相鉄バスまたは神奈中バス

二俣川―鶴ヶ峰―中山駅前

4

34分

9.2km

370円

グリーンライン

二俣川―中山

8

9分

5.7km

240円

 

現在この区間を公共交通だけで移動しようとすると、一度横浜駅まで出るかなりの遠回りの経路か、電車と1時間に4本のバスを乗り継ぐ経路しかない。今後相鉄新横浜線が開業すると、二俣川-新横浜-中山という経路が利用できるようになるが、横浜経由ほどではないにせよ遠回りになるため、運賃・所要時間ともにグリーンラインが優位になるであろう。

 

(6)日吉―鶴見

 

路線名

区間

本数

所要時間

距離

運賃

東急東横線または東急目黒線・JR南武線・JR京浜東北線

日吉―武蔵小杉―川崎―鶴見

8

18分

13.8km

300円

グリーンライン

日吉―鶴見

8

9分

5.7km

240円

 

鶴見から日吉への路線ができることにより、現状では湘南新宿ラインが全列車通過で、その上2019年11月運行開始予定の相鉄・JR直通列車の停車も困難(JR東日本は、ホーム建設費の地元負担と、貨物線を使用するJR貨物の合意を停車の条件としているが、工事には事業費200億円と最低12年の歳月が必要とされる)であり、渋谷・新宿方面に直接向かうことができない鶴見から、東京副都心方面へのアクセスが向上することが考えられる。

 

4. 最後に

 2019年現在、グリーンラインは全長13kmの比較的短い路線であり、緑区・都筑区・港北区に在住・在学・在勤でない人にはあまり知られていないであろう。しかし、計画中の路線が建設されれば、横浜市郊外地域相互間の移動がより容易になることが見込まれる。国土交通省交通政策審議会の2016年の資料では、延伸計画について「事業性に課題がある」とされていて、現段階では延伸工事の着工に向けた具体的な動きは見られないが、一横浜市民として、今後の動向を注視していきたい。

 

*写真は(特記以外)全て筆者が撮影した。

 

5. 参考文献

『横浜市営地下鉄ご利用ガイド』(横浜市交通局)

「グリーンラインに新造車両を導入!」(横浜市交通局)

http://archive.city.yokohama.lg.jp/koutuu/kigyo/newstopics/2013/news/n20130913-8815-01.html (2019年4月2日閲覧)

「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」(国土交通省交通政策審議会)

http://www.mlit.go.jp/common/001138591.pdf (2019年4月4日閲覧)

「東京圏鉄道網図(都区部、横浜・川崎)」(国土交通省運輸政策審議会)

http://www.mlit.go.jp/tetudo/toshitetu/pdf/03_10_03.pdf (2019年4月4日閲覧)

「地下鉄運賃改定 内容一覧」(横浜市交通局)

http://archive.city.yokohama.lg.jp/koutuu/kyoutuu/pdf/t20140312-8211-01.pdf (2019年4月5日閲覧)

「「日吉駅~鶴見駅」間の事業化検討を明記、京浜臨海部の再編整備プランに」(横浜日吉新聞)

https://hiyosi.net/2018/10/01/greenline_2018-8/ (2019年4月12日閲覧)


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