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駅が増えた話

平成27年度入学 横ナハ

 

1.   概要

民営化30年がたち、国鉄時代と比べて廃線により駅が減ることもあったものの、逆に多くの残存線区では駅が増設された。その種類や方針などが各社で異なることもあり、旅客6社で比較する。

2.   JR北海道

(1)  概要

JR北海道での駅の増加に関して特徴的なのは、新設ではなく昇格が多いことがあげられる。正確に言えば、国鉄時代においては臨時駅だったもの、あるいは駅として呼べない、仮乗降場であったものが民営化と同時に駅に昇格されたことである。これらの昇格された駅では、行き違い設備を備え、きちんとした駅舎や十分なホーム長さを備えるわけではなく、1両がかろうじて停車できる程度のホーム長さ、あるいはホーム自体が木造であり、駅舎が存在しないなど、いわゆる板切れ駅のような構造がみられる。また民営化直後には営業キロが設定されない駅も存在し、数年後に設定された駅も存在する。しかし、それらの昇格駅の中にも路線の廃止、あるいは駅周辺の過疎化に伴う利用客数の減少により廃駅となったものも存在する。

 

(2)  札幌近郊

 札幌近郊では昇格駅のみならず、民営化後にも積極的に駅の設置が行われている。昇格駅においては稲積公園駅や発寒中央駅など、分割民営化を5か月後に控えた1986111日に臨時駅として開業し、翌年41日の分割民営化により昇格されたものも存在する。昇格直後から営業キロが設定されており、設定されない場合に比べ利用者の運賃負担が軽減されている。また札幌近郊以外の昇格駅とは異なり、19884月時点でこれらの昇格駅では全ての普通列車が停車する。一方で、これらの駅を優等列車は全て通過している。これは20174月時点においても変化はなく。普通列車、あるいは普通運転区間の快速列車のみ停車しており、それ以外の優等列車は通過している。

民営化後にはほしみ駅、八軒駅などが開業している。いずれも開業前は両隣の駅間が4km前後あり、都市化に伴って設置されたと考えられる。ほしみ駅の場合は札幌方面から当駅止めの列車が設定されているが、折り返し線などは存在せず、隣の銭函駅の中線まで回送されて折り返す。

 

(3)  札幌近郊以外の地域

 札幌近郊以外においては、新大楽毛、釧路湿原駅など一部を除いて民営化による昇格駅がほとんどを占める。これらの駅の多くは当初営業キロが設定されず、乗車の場合は手前の駅から、下車の場合は次の駅までの料金を支払う必要があった。また、仮乗降場からの昇格駅では民営化直後にはJRグループ編纂第1号の時刻表であっても駅としての存在が記述されていなかった。これらの仮乗降場からの昇格駅は普通列車でも通過する列車が存在し、例えば19884月ダイヤ改正における天北線721Dの場合は、宇遠内駅を除いた営業キロが設定されていない駅を通過していた。

当初営業キロが設定されていなかった昇格駅では、後に営業キロが設定された駅もあるが、利用者が少なく廃止された駅も少なくない。天北線や留萌本線留萌―増毛間、名寄本線、深名線など路線ごと廃止された例も多い。

 

3.   JR東日本

(1)  概要

 JR東日本では、仙台や新潟など、地方都市の周辺区域、あるいは東京23区周辺においては新駅の設置が比較的多く行われているものの、山手線を含む東京23区では民営化後、路線の延伸とともに開業した京葉線の各駅と、田町―品川間に開業予定の新駅を除き駅の開業が行われていない。既に民営化以前に都市としての開発が十分行われており、再開発と一体となった駅整備計画が生じない限りは今後も既存路線に対して新駅は開業しないものと思われる。一方近年では利用客の少ない駅を一部期間、あるいは通年列車が全く停車しない通過駅とした後に廃止する事例が生じている。

 

(2)  小田栄駅の面白さ

 2016326日のダイヤ改正に伴って、南武線支線に小田栄駅が開業した。この駅はICカードの普及した現在における簡易的な駅新設の例である。小田栄駅の特徴として、運賃が隣の川崎新町駅と当面の間同額であるということがあげられる。また、その川崎新町駅との相互利用において、交通系ICカードの利用ができない。というのも小田栄駅の改札システムは川崎新町駅のものと同一なためである。同様に他駅の改札システムを流用する例として私鉄では2017722日に開業予定の東武ワールドスクエア駅がある。この駅までの運賃も一部の例外を除いて隣の小佐越駅と同一となることが発表されている。

 これらの駅のように改札システムを隣駅と同一にすれば、システム改修などによる駅設置コストの増加に歯止めをかけることができ、結果として駅の新設を容易とするが、隣駅との需要が大きいと見込まれる場合にはICカードが利用できないという欠点が大きくなる。先述の田町―品川間新駅では山手線や京浜東北線といった莫大な需要を持つ路線に建設され、田町あるいは品川までも大きな需要が見込まれる、そのため通常通り営業キロを基にして運賃が設定される可能性が高い。その際のシステム改修と同時に小田栄駅も通常の営業キロを用いた駅に変更される可能性がある。ただしその場合は値上げ、あるいは値下げとなる区間も生じる。

 

4.   JR東海

(1)  概要

JR東海区間において民営化後に新設された駅の大半は東海道本線または名古屋近郊に属する。その他の例としては御殿場線の長泉なめり駅や、臨時駅となるが参宮線の池の浦シーサイド駅など、わずかである。JR東海の所有する他路線において、飯田線のように私鉄を発端とした線区では国鉄線として開業した線区よりも駅間の距離が短く、民営化後さらなる駅の新設は困難であったと考えられる。しかし、中央新幹線の長野県駅が飯田線との交差部分に比較的近い所に設置される見込みであり、地元自治体の飯田市は飯田線に乗換駅を整備することを検討している。

 

5.   JR西日本

(1)  概要

JR西日本では、JR東日本の例と同様、開発が完了されている大阪都心部での既存路線への駅新設は行われていないが、大阪近郊の、特に私鉄と競合する京都―姫路間においては駅の新設が積極的に行われている。20174月現在一番新しいものとして2016326日開業の東姫路駅、および麻耶駅があり、さらに茨木―摂津富田間においても新駅の建設が進んでいる。大阪近郊の他、広島地区、岡山地区といった政令指定都市周縁部に新設されるだけでなく、下関地区の梶栗郷台地駅、米子地区の東山公園駅、金沢地区の明峰駅など、地方都市近郊においても新設されている。

 

(2)  複々線での駅新設

JR西日本の東海道本線および山陽本線の草津―西明石間では複々線となっている。そのうち、草津―兵庫間では方向別複々線となっており、さらに京都―兵庫間では原則として普通が内側の電車線を、新快速が外側の列車線を走行する。この状態で電車線のみに新駅を設置する場合、電車線が方向別複々線の外側にある場合と比べて都合が悪い。というのも、電車線が外側にある場合は駅を新設する場合、線形を大きく変更する必要が無く、複々線のさらに外側の部分にホームなど駅施設を設置すればよい。しかし、電車線が内側を走る場合、ホームの敷地を確保するためには列車線のみ、あるいは列車線と電車線の両方を複々線の外方に移設する必要がある。駅の前後で外方へと線路がずれるため曲線が生じ、電車線が外側の場合よりも敷地が必要となる。京都―兵庫間の方向別複々線では民営化後に開業した全ての駅において、内側電車線の上下線間に島式ホームが設置されたため、列車線と電車線の両方が複々線の外方に移設されたほか、これらの駅では列車線を走行する新快速などの優等列車の停車が物理的に不可能となっている。一方で、京都以東の複々線区間に開業した南草津駅では、電車線と列車線双方にホームが設置された。

6.   JR四国

(1)  駅ナンバリングと新駅の関係

JR四国が民営化後に開業した駅は4つのみである。そしてその4つは四国内の四県にそれぞれ1つ設置された。香川県の高徳線オレンジタウン駅、愛媛県の予讃線大浦駅、高知県の土讃線小村神社前駅、徳島県の牟岐線文化の森駅である。このうち、駅ナンバリングが付与された後に新設されたのは小村神社前駅のみである。

JR四国では臨時駅となる津島ノ宮駅と田井ノ浜駅を除いた全駅で駅ナンバリングを採用している。駅ナンバリングは利用者に対して乗換駅や下車駅を簡単に理解させることができるため、新駅の開業に伴い既存の番号を変更することは望ましくない。駅設置の計画がナンバリング付与時点で既に登っていれば、その新駅の番号だけ予め飛ばすことができる。JR東日本やJR西日本[1]がこの例であり、先述の田町―品川の新駅や、茨木―摂津富田間の新駅などに付与される予定の番号は欠番となっている。

しかし、小村神社前駅は駅ナンバリング付与当初には設置計画が存在しなかったため、隣の波川駅がK08、日下駅はK09と、欠番が存在しなかった。そのため、小村神社前駅の駅ナンバリングは高速道路に見られるような枝番付きのK08-1となった。

なお、小田栄駅の関連で少し触れた東武ワールドスクエア駅は駅設置に伴い新藤原方面各駅の駅ナンバリングが増加した。

 

7.   JR九州

(1)  概要

JR九州はとても積極的に新駅の設置を行った。例として北九州市と福岡市を結ぶ鹿児島本線小倉―博多間では、小倉方面から順にスペースワールド駅、陣原駅、教育大前駅、千鳥駅、ししぶ駅、新宮中央駅、九産大前駅、千早駅と、日豊本線の西小倉駅に鹿児島線用ホームを設置した計9駅が民営化後に設置されており、元の駅数の1.5倍近くまで膨れ上がった。駅の積極的な増設はJR九州に限らず、民営化前後に国鉄あるいはJR九州から転換された甘木鉄道、松浦鉄道、平成筑豊鉄道、南阿蘇鉄道、くま川鉄道においても多くの駅が新設されている。一般的には、新駅を設置するということは普通列車の所要時間が増加し、長距離を普通列車で利用する場合は不便になる。9駅が新設された小倉―博多間の通過待ちを除いた所要時間は国鉄末期と現在とを比べると10分前後の増加と、駅数の割には所要時間が増加していない。新型車両による加速力の向上や、新幹線と競合が生じ在来線特急が頻発するようになったことなど、様々な要因により時間短縮を図ることができたのではないだろうか。

 

8.   参考文献

『鉄道ファン 20088月号』(交友社)

『国鉄監修時刻表 19863月号』(日本交通公社)

『時刻表 19884月号』(日本交通公社)

JTB時刻表 20173月号』(JTBパブリッシング)

 

「川崎市シティプロモーション担当公式ツイッター」

              https://twitter.com/kawasaki_pr/status/677794953657982977/photo/1 

2017416日閲覧)

JR東日本の小田栄駅開業で注目」

              https://thepage.jp/detail/20160801-00000007-wordleaf?page=1

2017416日閲覧)

「東武ワールドスクエア駅開業日決定」

http://www.tobu.co.jp/file/pdf/79c334dda9506eee8dc5a17f5b07168c/170228_3.pdf?date=20170228191107

2017416日閲覧)

飯田市、リニア駅北西に新駅検討 飯田線と円滑

http://minamishinshu.jp/news/economy/飯田市、リニア駅北西に新駅検討 飯田線と円滑.html

2017416日閲覧)

日高村に来春JR新駅

http://web.archive.org/web/20070928093940/http://203.139.202.230/?&nwSrl=214839&nwIW=1&nwVt=knd

2017416日閲覧)


[1] JR西日本では駅ナンバーと表記する


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